目の前に現れた全ての元凶を睨むように見つめた。飄々とした態度のままそれはこちらを見つめている。きっとつっかかったところで全部弾かれるのだろう。そのことは、先ほど物好きな生徒たちが殴りにいったのを見て知っている。
ハァ、と息を吐いた。普通の息ではない。僕の中に生まれついて備わってしまった、人を弱体化させられる息だ。僕の武器はこれだけしかない。その微弱な魔力を察したのか、先生の前には柔らかな魔力障壁が生まれた。
「無駄なことだとわかってやってるのかい?」
「……試した、それだけのことです」
「アンタ、いつまでそうしてるつもりだい?」
それが現在のことを指しているのか、これまでのことを指しているのかわからなかった。
「どういう意味ですか」
「アンタが一番わかっているだろう」
わからない。僕はどうしてるつもりなのだろう。迷わないために、もう投票した。けれど今は迷っている。投票した後にいろんな人と話してしまったせいで。僕は守るために投票していない。なんで、こんな風にいつも後悔してしまうのだろう。僕はいつも僕がなりたいものになれない。僕はいつも僕のことしか考えていない。それに気づくのは、手遅れになってからだ。
「ま、アンタの思うようにすればいいよ。せっかく投票してるんだからねぇ」
僕が思うように? それなら、わかっている。まとまらない。頭の中がごちゃごちゃになる。僕に声をかけてくれた人。この学園の生徒は皆、優しい。優しいのに、ああ、僕は、でも。今更。
「いつでも手助けしてあげるよ、私の好きな方向だったらね」
肩がぶつかる。横を通り過ぎた彼の姿から異様なほど冷たい空気が漂った。頭の中で全てが凍っていくかのように、また僕の口から息が漏れた。わかりました、先生。
とてつもなく簡単なことだったのでしょう。彼らが味方になってしまったら。
「僕を殺してくれないですもんね」
呟かれた言葉の行き場はどこにもない。
先生に教えてもらう話