「くおりん……?」
生徒たちが中心となって有志で作り上げた避難所は、薄い魔力障壁によって囲われており、怪我人や戦闘が苦手な生徒たちが奔走していた。疲労した生徒もここにいると聞いて、彼女の姿を探していた。
空が割れて変な黒い竜が現れた時、対照的な白い竜が出現させた魔物たちの討伐に思わず走り出していた。安全地帯が作られることは、ワームやゾンビ、スケルトンが蠢いていたときからわかっていたからミケのことは心配していなかった。
けれど左腕を失った今、人間の体を模した魔物はさておき、馬形の魔物の力がいかに強大であるかを身にしみて感じてしまう。安全であると信じてはいるが、……いや、今更自分に嘘をついても仕方がない。ただ、単に俺が生きていたから会いたいのだ。
死ぬかと思った。それは事実だ。その時頭によぎったのはミケのこと。もし死ぬのなら、その前にミケに会いたい。もっと欲を言えば、死ぬならミケの隣がいい。
目を覚ましてから、仲間のことや治療のことで慌ただしかったがそれでもずっと、少し落ち着いたらミケを探そうと心に決めていた。
それがこんなにも早く見つかるなんて。
聞き慣れた声に振り返ると、目を見開いて驚く彼女の姿があった。
「ミケ!」
その表情はすぐに明るい笑顔に変化する。駆け寄ったミケが首に手を回し、再会を喜ぶように俺の体に抱きついた。
「よかったぁ、くおりん、生きて……た……?」
すぐその違和感はミケに伝わったようで、何度も俺の左腕があった場所を触っている。
「く、くおりん、これ、左腕、ない……よ?」
リンが置いていったローブを上から被っているせいで一目見ただけでは左腕がなくなっていることには気づかない。ミケの表情がみるみるうちにまた暗くなるのが見て取れた。……こんな顔をさせたいわけじゃない。同じ感情がまた沸き起こって、なんとも言えなくなる。
「ああ。ちょっと失敗した」
「ちょ……ちょっと、じゃないよぉ……」
「ああ。ごめんな」
今にも泣き出しそうなミケの頭を右腕で撫でる。
「もうミケのこと、両腕で抱きしめられねぇ」
唇を噛み、涙を堪えるようにミケは俯いた。少し間が空いてからまたミケの両腕が俺の体に回る。力一杯、というようにミケの腕が俺を抱きしめた。
「……くおりんが抱きしめられないなら、ミケが代わりに抱きしめるよぉ」
こみ上げてきたものをぐっと飲み込む。取り返しのつかないことをした。この罪を背負って生きろ。言葉が重くのしかかって、潰れそうになった。目に力を入れてこぼすまいとする。ミケには絶対弱い自分を見せたくなかった。
左腕の一本ぐらい、笑い飛ばせるようになりたい。ミケにこんな顔をさせない人間になりたい。目的があれば人はどこまでも強くなれるような気がした。
「ありがとな、ミケ」
「……うん」
ぐす、と鼻をすする音がほんの少し聞こえて、残った腕で力の限り抱きしめた。
「よし、ミケは怪我してないか?」
「うん、大丈夫」
「疲れてたりは?」
「してないよぉ」
「じゃあ行くか!」
「え……どこに?」
「魔物討伐に決まってんだろ! ちっせぇ方だから」
「そ、そんな、くおりん、怪我したばっかりなんだよぉ!?」
「俺はもう平気だ。むしろ休みすぎて体なまっちまうよ。それに……」
「ミケが守ってくれよ。よろしくな?」
ミケちと小型共闘