得体の知れぬ

6.0 割れる空からの声
レイ


 空が割れた。そう思った次の瞬間にはもう、得体の知れない魔物たちが学園の敷地内を跋扈しはじめる。状況を飲み込むには時間が必要だったが、立ち止まっているわけにはいかなかった。
 互いに怪我をしたまま別れた彼女を探しながら歩き回っていると、目の端にふと見覚えのある蒼い長髪が見えた。
「……サリー!」
 魔物の姿は幸い近くにはなく、しかし非戦闘員に近しい彼女が一人でこの場にいることは目を疑う光景だった。交流祭のときもそうだが、彼女は時折思い切ったことをする。
「レイか」
「貴方、無事だったんですか。どうしてこんなところに」
「……まぁ、成り行きだ」
 ボソッと呟いた彼女がふっと顔を遠くに向けた。一瞬のうちにあたりの空気が変化していくのがわかる。明らかに眠期の気温ではない温度が体を包んだ。ほのかに温まる体と、直後に聞こえた声にハッとする。
「……聞きましたか、サリー」
「ああ。お前は行くというのだろう?」
「当然です。これだけのことをするならきっと、困っているんですから」
「……私も行こう」
 彼女が自ら戦いに赴くのは珍しい。空が割れるほどには。こんな状況で引きこもっているわけにもいかないと思ったのだろう。長年この学園にいるとはいえ、きっと戦いには不慣れだろう。彼女をここに残すのも憚られる。つれていって守ったほうがむしろ安全かもしれない。
「行きましょう。きっとそんなに余裕はない」
「ああ」



 声の聞こえたところまで走って行くとそこには既に敵と刃を交えている生徒たちがいた。自分たちよりはるかに巨大な馬のような魔物……エクスピアシオンがバチバチと雷のようなものを発しながら無機質な目で見下ろしている。
「大丈夫ですか!」
「見ての通り、かな。マオの呼びかけを聞いてきてくれたのか?」
「ええ」
 片目のみを隠した金髪にエルフと思わしき長い耳、制服からクローの生徒と思しき人が俺とサリーを見て尋ねた。隣にいる、暗い色の髪を一つに束ねたクローの青年が飛んできた氷の攻撃を防いだ。おそらくは彼がマオだろう。俺とは違う、黒い翼を背中に携えている。
 少し離れたところでは、小さな翼をつけた少女が不思議な武器を手に攻撃していた。いたって真面目なようではあるのだが、いかんせん持っている武器が可愛らしいせいか少しだけ緊張感が薄れる。
「自己紹介は後、とりあえずどうにかして攻撃してくれるかな!」
「あ、ああ! 加勢する」
 マオらしき青年が若干余裕のなさそうな表情をした。状況は思ったより切迫しているのかも知れない。サリーを一瞥する。
「サリー、貴方も戦えますね?」
「ここまできたからにはな。ぼんやり立っていても仕方ない、行くぞ、レイ」
「ああ。貴方は私から離れないように」
 少女に続くように周囲の土を持ち上げ始める。土の塊が宙に浮いて魔物めがけて集約した。一瞬、土埃で魔物の姿が消える。そのとき、目の端に桃色の髪の少女が映った。
「ヴィネアが来てあげたわ!」
 キラリと光ったスプーンが土埃の中の魔物を捉え、がきん、と音を立てた。思ったほどの手応えを感じられなかったのか、すぐに下がって地面に着地する。腰から生えた一対の翼がひらりと舞った。
「あれは一体なんなの? 全然可愛くないわ」
「先ほど白い竜が呼んだ魔物でしょう。助太刀感謝します」
「とりあえず倒せばいいのね」
 こちらを振り向いていた幼い顔がパッと魔物に向いた。
「多分、相手は水属性だ。火属性の攻撃は通りづらいと思うよ。実際、俺の攻撃はそんなに通らなかったし」
「水……俺は土属性です。おそらく通りやすいでしょう」
 いつの間にか土埃は消え、その姿が見える。エクスピアシオンは次の攻撃の準備に入った。これまで戦って来た魔物とはまた違う雰囲気が漏れ出ている。どう倒せばいいのかがわからない。
「……やるしかない」
 小さく呟いてもう一度土を掘り起こした。今はとにかく攻撃を当てることに専念するしかないようだ。

チーム:だいじょう部
マオくん( @r4_54g )
シャルロくん( @Major_catm )
サリーちゃん( @wocarinas )
アリソンちゃん( @yaesudaa )
ヴィネアちゃん( @tencha_tr )
レーヴェくん( @hiyusan_30 )
prev  return  next