「どうです、共闘と行きませんか」
春彦の言葉にほんの少し落ち着きを取り戻す。気を抜いていたせいで敵の攻撃がこちらに迫り、春彦が再度僕の腕を引いて後退した。
「ごめん、ありがとう」
「正気になったならアンタ、やることはわかるね?」
「当然でしょ」
合流した他の生徒たちは、すぐさま状況を理解してエクスピアシオンに立ち向かって行く。
その姿はまるで鬼、と形容するのがふさわしいようにも思える。巨体に赤髪はよく映える。鬼の角と繋がったかのように面がその顔には張り付いてた。両腕から炎を生み出したその生徒は、果敢にエクスピアシオンへ挑んで行く。
全身をアッカの赤で包んでいた姿がほんの一瞬見えなくなる。その姿がカメレオンのように色を変え、周囲の色に溶け込んでいった。その見た目は日ノ本によく伝えられている忍そのもののようで、ほんの少しだけ僕は親近感を沸かせた。
赤色の忍とともに合流したのは反面、全身が青い生徒だった。顔は面なのか否か、ここからでは判断がしにくい。得体の知れない液体の入った小瓶を持ち、中身を出していた。はっきりいって近づきたくはない。
その中には見知った顔もひとり。
「ノラ、アンタも……」
「ちょうど通りがかったから。とりあえずアレ、倒しちゃおう」
うん、と頷く。攻撃が集約したエクスピアシオンの殻が一つ、また一つと割れて行く。花びらがひらひらと落ちた。
一歩、踏み出そうとした、そのとき。エクスピアシオンの足先がこちらを向く。蘇ったのは、亞の死に様。
「茉紘?」
前に出られない。足が震える。死にたくない。怖い。いろんな感情が沸き起こって前に進めない。怖い。
心に決めたはずだった。僕は仇をとるって。こいつよりも何倍も強いであろうあの白い竜を殺さなきゃいけない、そのはずなのに。足がひどくすくんでいる。
「茉紘。無理しなくていい、下がって」
なにかを察したノラが僕を牽制する。だめだ、こんなところで立ち止まってる暇なんかない。僕がやらなきゃ、亞は浮かばれな。
「ちがう、大丈夫。ごめん、ノラ」
「いいから!」
ノラが僕よりも前に出る。普段はいつも僕が前に立って一緒にいたのに。情けなさが勝っていく。怖い。情けない。僕は……なにもできない。
頭では前に進まなきゃいけないとわかっているのに、僕は、どうしてもそれ以上進むことができなかった。
*
あたりを静寂が支配する。倒されたエクスピアシオンの気配はもうどこにもない。ともに討伐した……否、僕を助けてくれた生徒たちは各々の目的を果たしに早々にその場から離れてしまった。
……それでいい。これ以上情けない自分を見せるのはいやだ。そう思っているのに、僕は、僕は。
体は結局動いてくれなかった。一人で立ち向かった時はあんなにも無鉄砲に動いていたのに、春彦に命を救われてから不思議と怖くなった。一歩前に進めば、あの鋭い馬の足先が僕の心臓を抉るのではないかと不安になった。僕はただ、手に種火を作ったそれを投げることしか、できなかった。
「……アンタ、いつまでそこに立ってるつもりだい?」
ずっとそこにいた春彦が、小さく僕に尋ねた。その言葉の優しさが、まるで引き金みたいに僕の言葉を押す。
「ねぇ、僕のこと殺してくれない?」
チーム:水濡れ厳禁
輝乃さん(@rerererette)
大鷲山靜さん(@5b6uuu5n63l)
恋乃春彦さん(@jibera_kikaku)
ノラちゃん(@custa_cream)