ヴィネアとレーヴェが前線で言い争いをしながらエクスピアシオン第二形態の霧に向かって攻撃を行ない続けている。アリソンとマオは後方で爆弾づくりを続けていた。雰囲気はゆるく、ふわふわとしたものであったものの、視線と魔力から真剣であることが伝わってきていた。この場にいるもの全員が命を賭している。
隣を離れないサリーを見た。表情に変化はさほどないものの、険しいことに変わりはない。状況の打破には現在後方で作られている爆弾しかとっかかりがないからだ。
「サリー」
「なんだ」
「アレについてどう思いますか?」
無言でその視線がエクスピアシオンへと向いた。その下では喧嘩している二人の声と攻撃音が入り混じってけたたましい音を立てている。
「実際にはどうなのかわからないが……まずは攻撃してみればいい」
「……まぁ、そうなんですが」
共に攻撃を防いでくれているシャルロが頭上に飛んできた攻撃を撃ち落とした。負けじと俺もあたりの土を操作する。浮かばせた土の塊を一気に魔物へ打ち込んだが、まるで実態のないものを攻撃しているかのようにそれはすり抜けていく。
「……穴は開けているな?」
「しかし霧ですから、すぐふさがってしまいそうですね」
「そうでもないかも」
すぐ近くにいたシャルロが指差す先を見やる。塞がれていない穴がいくつか散見されていた。
「土属性が弱点なのは変わってないんじゃないか?」
「爆弾が出来次第弾き飛ばせるとは思いますが……それまでできるだけ弱体化させるのも手かもしれませんね」
うん、と頷いた彼は次の攻撃の手をあげた。ふと、俺の袖口をひっぱる小さな影が動く。
「なんでしょう」
「少しは手伝おう」
無機質な瞳が俺を見上げ、そして彼女の手元に移った。持参していた金属を取り出すと、それはすぐさま液体状に端から変化していく。
「なにを?」
「霧とて固めてしまえば動けまい」
液状の金属が今度は敵へと伸び始める。眺めていた俺を一瞥した彼女はほんの少し微笑んだ。
「なにをぼーっとしている? 手を休めている暇はないぞ」
「……ええ、その通りで」
彼女の金属を守るように土を動かしていく。魔物に到達した金属はその体にしゅるしゅると巻きつき、そのままそこで固まった。同時に土属性魔法を叩き込む。敵側から投げられる攻撃がほんのすこし、止んだとき。
「……できた!」
あどけない、無邪気な、そしてすこし正義感に溢れた声が響いた。