馬面の彼

茉紘
修練棟 16時の部



「さぁかかってこいアッカ共!」
 フィールドの一部から声が聞こえて振り返る。勇ましいクロー生もいたものだとそちらを見やったのだが、周囲の人たちが無駄に成長してくれたおかげで全くその姿を捉えられない。何やらざわめきが周りから聞こえてくる。
「ヤベーよ、誰だアイツ」
「ジャージ羽織るて」
「すでに満身創痍かよ」
 途切れ途切れに聞こえるざわめきが不可解で好奇心が刺激された。浮遊魔法で浮かぶとそこには。
「……キモッ」
 思わず心の底からの声が漏れる。声に反応したのか彼……と思しきそれはこちらを振り返った。
 青いジャージ。その時点でダサさは臨界点を突破しているのだが、その頭が不可解である。なぜ馬の被り物をしているのか。ざわめきの中から一番聞こえる声は、馬……馬? というものばかりだ。
「アンタ、クロー?」
「ああ。どう見てもクローだろう」
「ふざけてんの?」
 心底わからないと言った顔を……否、態度を示して馬の被り物が首をかしげた。思わず近寄ってしまったが、面白がったアッカ生の攻撃が馬を狙う。彼はさっさと手から炎を現してその攻撃を一つ一つ防いでいった。流れ弾が僕の顔に当たりそうになり、思わず攻撃主を睨む。
「ちょっと! この馬殴るのはいいけど僕の顔に傷つけたら骨の髄まで燃やし尽くすからね!」
「怖……」
「あ!? つーかアンタもなんでそんなあからまさな的みたいな格好してくるわけ! バカなの!?」
 彼の後方から迫る攻撃に鬼火で対処する。自然と僕までもこのアッカの猛攻撃の的になっていた。ここで彼を見捨てれば、彼が狙われ手が回らなくなり、アッカ側にポイントが入りまくるだろう。仕方ない。いっそイライラし始めた感情を全部アッカにぶつけるように、体の周りへ炎を浮かばせた。
「いい? 攻撃が当たればアッカの点数なんだからね?」
「わかってるさ。できるだけ避ける」
「できるだけじゃない。全部避けろ」
 僕たちが、不愉快な理由とはいえ注目の的になるのなら、僕たちに攻撃するアッカ生の背後から他のクロー生が攻めるのを期待するしかない。逆挟み撃ち戦法だ。浮かばせた鬼火を一つずつ、的確に迫る攻撃へ向けて発射した。

修練棟 16時の部
馬のお面をかぶった彼、レジスさん(@tti_apollo)お借りしました!
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