まるで中世の騎士のように、その人が立った場所は綺麗だった。癖っ毛なのだろうか、月の光が強い夜のような紺色をしたつば広帽の下からは金色の短髪が覗いている。大きなつばの下からは真剣な表情が、繊細な指先からは人を弱体しているのだろうか呪術が繰り出されていた。
中心に円がくりぬかれた十字架が生徒に張り付くと明らかに力がすいとられていくのがわかる。懐から取り出したナイフで多少の怪我を負わせ、確実に一点ずつ点数をとっているようだ。彼が動くたび、胸元の白いストールが揺れる。
前方に注意を払い続けているのか、背後から迫る攻撃に気づかなかったのかもしれない。助けるというよりかは、彼で完成されている美しい芸術のようなものを壊すな、という思いでアッカ生を伸した。
「おいベルナ! お前後ろも気をつけろ!」
周囲を飛んでいた青いカラスのような鳥が喋った。喋るのか……と驚いていると、こちらを振り向いた彼の目と視線がかち合う。その瞳はまるで宝石、否、そうやって表現することすら陳腐になりそうなほど純真でまっすぐな瞳をしていた。
「ありがとう、助けてくれたんですね」
「あ、うん。別に。それより、アンタの呪術すごいね。なんていうか……綺麗」
素直に感想を告げると彼は驚いた表情を見せた。瞳が左右に少しだけ揺れ、視線を外してほんの少し微笑む。
「そう言われたのは初めてです。ありがとうございます」
「もの好きなやつだな!」
「うるさいよ、トト」
たしなめるような口調で彼はその鳥に告げた。彼の周りを飛び回り抗議するトトという鳥は、普通のカラスではないようにも見える。
「アンタもいい色してんじゃん?」
それは確かな本音だった。そう告げるとトトは嬉しそうにこちらへ向き直り、さらにまた飛び回る。
「ごめんなさい、うるさいでしょう」
「ううん、全然」
なんとなく、騒音でまみれたこのフィールドと切り離された空間にいるような感覚に陥る。彼の声はこの喧騒の中でもちゃんと耳に届いていた。空気のよめないクソアッカが彼の背後からひっそりと迫る。クナイを両足の太ももから抜き取り無属性魔法で浮かせるとアッカ生の両腕めがけて突き刺した。ギャッと短く叫んだアッカ生はそのまますごすごと退散していく。
「あ……また」
「いいんだって。僕も参加してるんだから。僕は茉紘、アンタは?」
「おれはベルナ。よろしく、茉紘さん」
すっと差し出された右手と、その表情を見比べた。本当にここがまるで別の空間になってしまったかのような感覚で、どこか夢見心地のままその手を握った。
「茉紘でいいってば」
徐々に群がり始めたクソアッカ共の気配を感じながら一度しっかりと握る。手を離した次の瞬間、お互いの背後に迫るアッカ生向けて互いの攻撃が交差した。
修練棟 16時の部
ベルナくんとトトニキ(@4iriustar)お借りしました。問題ありましたらご連絡いただけると幸いです!