敵ながら、美しい炎だと思った。
夕焼け時の、燃え盛るような空によく似た色の長髪を揺らした彼女は手の中から麗しいほど綺麗な豪炎を出現させていた。黒い手袋はその明かりを受けて煌めきを増す。炎の奥からこちらをまっすぐに見つめているエメラルドの瞳は、不思議と無感動の中にかすかな情熱を感じさせた。
「アンタも火属性?」
「見ての通り」
短くそう答えた彼女の声は、パチパチと炎が弾ける音に重なって聞こえた。心地いい声だ。
「そう」
短く答え、自身の腕の中にも炎を出現させる。彼女の持っている炎とはまるで違う、青の中にほんの少し赤が混じるだけの炎。お互いの距離はさほどないものの、徐々に威力を増し続けたお互いの炎は対照的な色を持ったまま重なりかけていた。灼熱が周りを取り囲む。ジワリと汗がにじむなかお互いの動きを見極めようと一切視線は外さなかった。炎が空気を燃やし、蜃気楼すら揺れている。
「……綺麗ね、アンタの炎は」
しばしの沈黙を破るように声を出すと、彼女は目をパチクリと動かして驚きと捉えられる表情を見せた。視線がほんの少しだけ彼女自身の炎に移る。今。
先に動いたのも僕だった。一歩踏み込んで飛び上がり、手の中の炎を彼女に突きつける。間合いを詰めるだけの時間でも彼女は確かに動いた。お互いの炎が混じり、否、色は混ざることなく重なった。全く違う質の炎が交差したせいか、ばちばちとひどい音を放って対立した。
近づいた間合いの中、僕の青い炎と彼女の赤い炎の中で揺れる彼女の瞳が、ひどく綺麗だと思った。このイベントが終わって何かきっかけがあるなら話しかけてみてもいいかもしれない。
「キミの炎も、綺麗だと思うよ」
「そりゃどーも」
競り合う炎たちは一進一退を繰り返す。炎の音以外は聞こえない。ほんの少しだけ彼女の髪を燃やした炎が、焦げ臭い匂いを広げていた。
修練棟 16時の部
ティノさん(@yumeto_poke)お借りしました!