01

「やはり一人で来るべきではなかったのではないですか、レイ」
「いいんだ。暗闇を克服するチャンスだし、人に迷惑はかけたくないから」
 真っ暗闇の中、壁に左手を添えて歩いていく。アイボのセブが心配そうな声を上げる。もう何人もこの遺跡の中に入り、探索を進めているし、かろうじて道や壁の有無はわかるから一人でも大丈夫だろう、と無理矢理突入している。
「それに、光源になる魔物がいるらしいから」
「データ参照します。……オリオラ、と呼ばれる魔物ですね。遺跡の中には他にも攻撃的な魔物やトラップもありますから、気を付けてください、レイ」
 わかった、と返事をする。簡易的な遺跡内のマップはセブの口の中に入っている。迷うことはないだろう。
「今回の趣旨は宝探し、と教師陣は銘打っているようですが実のところはどうなのでしょうか」
「……遺跡ってくらいだから何かしら昔のことがわかればいい、程度に思っているんじゃないか。危険すぎるところに教師は生徒を送り込まないだろう」
 実のところ宝探し、というほど明るい物事ではないような気もしていた。遺跡というのは歴史の遺物。遺跡があるということは、そこにいたはずの人々の生活の残滓があるということだ。
 ホル=ティンドについては事前に調べてはいたが、やはりわからないことだらけだった。
「レイ、すぐ近くに入れる部屋があるようです」
「何メートル先だ?」
「五十メートルほどすればたどり着くかと」
 セブの言う通り、その部屋はあった。扉を押すとそれはあっさりと開く。中に入る。暗くてあまりよく見えないが、壁に近寄って目を細めるとどうやら古代文字が羅列された部屋のようだ。
「……っ!?」
 その文字を読もうと見つめた瞬間、頭の中に言葉が響いた。
『彼の国は私の母国よりもずっと質素で、文明的に未発達であった』
 なんだ、これは。文字を……読んでいるのか?
『そこで私は自分が学んだ知識や、持っている技術を人々に伝えた。魔法も、それに類する技術も持たない彼の国の人々にとって、それらはいわば超常の力だった。スポンジが水を吸うように、彼の国の人たちは知恵をつけていった』
 弾き出されるようにその声は脳から出ていく。とっさに周りを見渡すが、俺以外の姿は見えない。今のは、一体……。
「どうかされましたか、レイ?」
 セブが尋ねる。どうやら、セブやオスクロルには聞こえていなかったらしい。
「……セブ、今から言うことを記憶してくれ」
「かしこまりました」
 覚えている限りの先ほどの声を復唱し、セブの記憶媒体に吹き込んだ。