出会ったはなし

昼下がりの公園はのどかで居心地がいい。
空き時間にこの公園で読書をするのが私の楽しみのひとつだった。
気紛れに選んだ小説を手にいつもの場所へ向かうと、そこには珍しい先客の姿。人がいるなら仕方ないかと踵をかえそうとして、動きが止まった。眠っているらしいその人に、あまりにも生気が感じられなかったからだ。

「……ねぇ、生きてる?死んでないよね……?」

ほとんど死人のような顔色のその人に恐る恐る近づく。傍に屈んでそっと指先で頬に触れれば、微かに体温があった。
ついでに小さく胸が動いて呼吸しているのがわかりほっとする。
寝ているだけなら関わらない方が良いかと立ち上がろうとして、不意に腕が捕まれた。

「っ!?」

その冷たさに驚き振り払うと、気だるそうにその人が目を覚ました。

「なに……あんた、誰?」
「だ、誰って……それはこっちの台詞、」
「……俺は、別に誰でもいいでしょ〜。せっかく気持ちよく寝てたのに……ふぁあ、ふ」

あくびをひとつ、まだ眠たそうな様子でこちらを見るその瞳は赤い。
何だろう、そわそわして、逃げたいような、でもまだ留まっていたいような、妙な焦燥感に駆られる。

「あんた、ここに何か用事?」
「あ、本を読もうと思って……」
「ふ〜ん。じゃあ俺まだここで寝ててもいい?本読むだけなら別に邪魔じゃないよね」
「え?別にいいけど……」
「ん。おやすみぃ」

そう言うと、その人は再び眠りに落ちる。
私はため息をひとつ、その隣に腰を下ろして小説を開く。
それが、彼──りつくんとの出会いだった。

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