夜ごとの闇の奥底で



本編

【あらすじ】

 退魔一族の家系に生まれながら出来損ないの烙印を押された『神崎詩那:かんざき しいな』は、自由な高校生活を送っていた。しかし、現世を脅かす化け物に襲われ、謎の男に救われたことを機に、日常が崩れていく。
 平和な表世界から波乱万丈な裏世界に投下され――少女の運命が動き出す。



【舞台】

辻葩町(つじはな‐ちょう)
・東京の喧騒から離れた場所に位置する、山に囲まれた埼玉県寄りの町
・平均的な街並みの所々に古い街路や店があるため、京都に似た雰囲気を持つ
・町の西に流れる『加成川:かなるがわ』、支流の『空木川:うつぎがわ』
・支流の東が町の中心部『辻葩本町』で、南に『辻葩本町駅』がある
・加成川と空木川に挟まれた『西條:さいじょう』、『南條:なんじょう』
・西條の辻井橋を渡って本町に入れば総合武道場『双臨会館:そうりん‐』が見える
・本町駅の北側に『辻葩総合病院』、少し離れた場所に『辻葩ふれあい公園』
・南條の東隣に『桜庭:さくらば』、『功旺:こうおう』、桜庭の上に本町がある
・功旺の上に『東條:とうじょう』、『北條:ほくじょう』
・『学園町』と北條に挟まれて『松鶴:まつづる』
・学園町の西隣に『大椿:だいちゅん』がある



【学校】

辻葩学園
・学園町にある、この町唯一の私立高
・強い不良がこぞって入学する変わった伝統がある
・空手部や剣道部などの部活が強いことで有名で、全国大会に出る猛者がいる

男子制服
・白い縁取りのある紺色ブレザー
・黒地に青緑色のズボン
・紺色ベスト、紺色ニット

女子制服
・白い縁取りのあるセーラー襟の紺色ブレザー
・黒地に赤のタータンチェックのスカート
・ベージュまたは紺色のカーディガン
・ベージュまたは紺色ニット


三辻公立高等学校(みつじ‐こうりつ‐こうとうがっこう)
・大椿の南側にある、この町唯一の公立高校
・偏差値は低い方なので、誰でも簡単に受かることができる
・北側に六辻病院跡があり、度胸試しで行く生徒は多いが、大抵が痛い思いをする


南朋女子中学校(なお‐じょし‐ちゅうがっこう)
真賀男子中学校(まが‐だんし‐ちゅうがっこう)
・辻葩町の男女別の中学校
・南朋女子中学校は桜庭、真賀男子中学校は東條に位置する
・ちなみに辻葩南小学校は南條の北東側にあるため、南朋女子中とは割と近い



【町内】

辻葩総合病院
・辻葩町で一番大きな病院
・霊感を持つ医師や看護婦が多く、町の訳ありの患者が通い易くなっている
・霊力を持つ者は霊を駆除しているため、地縛霊などはほとんどいない
・退治屋などの裏世界に関連する仕事に就いている人間も対応している
・霊的な事件の被害に遭った場合は割額で対応してくれる


六辻病院跡(むつじ‐)
・大椿にある廃病院で、心霊スポット
アサガオソーイング、ツジハナ店
・北條にある24時間営業洋裁店で、手芸愛好者から評判されるほど品がいい


鶴祇館(つるぎ‐かん)
・松鶴にある、表建ては古い洋館だが『退治屋』の拠点で敷地面積は広い


辻井橋(つじい‐ばし)
・何の変哲もない石橋だが、異界に通じると云われている
・川の底にしめ縄を巻き付けた井戸がある


美篶商店(みすず‐)
・本町に近い功旺の北西側にある駄菓子屋
・本質は『裏世界』専用の武器を売る武器商人で、とある情報を売る情報屋
・普通の情報屋としての顔も利いているが、こちらの値段はかなり高い
・店長は謎が多く、いつから店を営んでいるのかさえ不明
・辻葩町以外にも店舗を持っているようだが……?


シラサキ医院
・空木川近くの桜庭にある白崎家の開業医院
・薬局も兼ね備えており、よく効くことから地域の人々に人気
・辻葩総合病院の現院長と深い繋がりがある


喫茶店『迷萃夢:めいすいむ』
・退治屋の幹部の拠点となっている店
・店長は幹部のリーダーが務め、一般人の店員も自由に雇える



【用語】

内務省退魔特務管理局(ないむしょう‐たいま‐とくむ‐かんり‐きょく)
・政府機関の一部である対異形・退治屋専門の組織
・退治屋を管理・統率し、『裏世界』の仕事を与える
・異形による事件が増えたので、明治から政府の特務機関に組み込まれた


退治屋(たいじや)
・妖怪などの異形を退治する専門の退治職
・退魔器という特殊な武器に選ばれ、高い戦闘能力を持つことが入職条件
・大昔より妖怪などの異形が増加したため、政府機関の一部に取り入れられた


退魔器(たいまき)
・意思を持つ生きた武器と言われている、退魔の力を持つ武器
・とある武器商人によって適合者に譲渡されるが、誓約をしなければならない
・誓約を結ばせて魂に定着させることで、出し入れが可能になる
・誓約を破れば適合者の中から消え、とある武器商人の許へ還る
・退治屋だけの武器だと思われがちだが、実際は退治屋以外の人間も使える


修祓師(しゅばつし)
・退魔の家系で有名な名門神条家が生業とする退魔師
・修祓器を手に入れて、はじめて修祓師の資質を得る
・本家は行政府や警察庁の依頼を直接受けるほどの実力を持っている


修祓器(しゅばつき)
・術師の魂に宿る霊力から生み出された退魔の武器
・形状は千差万別で、付随する能力も術師の本質に反映される


魂喰(たまぐい)
・人間や獣の精気を捕食する憑霊の一種
・実体はある(何かを模った黒い靄)が、通常は触れられない
・憑いた人間や動物の体を乗っ取り、生物を襲って血肉を食らう


禍殲卑(まがつひ)
・人間や獣が負の感情を抱えて死ぬと発生する化け物
・「霊力」でも「妖力」でもない、「呪力」を操る
・人や獣を襲って魂を喰って進化すると、知能の他に姿形まで変貌する
・最終形態の『伊』、進化段階の『呂』、初期段階の『波』の三段に分かれている
・上位になると魂喰を従えることができる


霊人(れいじん)
・人界と冥界の狭間である霊界に住む人ならざるもの
・人間と同じ姿形をしているが、何らかの特殊な力を持つ
・皇族、華族、士族、庶族の階級があり、人間と同じように優劣の差別がある
・立憲君主制で皇族の長『霊神:れいしん』が霊界全体を治めている
・皇都に皇族や華族と士族、成都や水都などに少数の華族と士族や庶族が住む
・庶族のほとんどが都の外である衆街に居を構えるが、流街に流れ着く者も多い


死神治安協会(しにがみ‐ちあん‐きょうかい)
・霊人が入る職
・実戦向きの霊人は協会に入り、死神として魂の審判者を務める
・現世にある魂の秩序の守護や、霊の罪を裁く
・人間の魂を脅かす霊や妖怪の管理、魂喰の討伐などを行っている
・死神の武器で霊魂を倒すことで、罪無き者は天界、罪ある者は冥界へ送る


神条家(かみじょう‐け)
・退魔の力を持つことで有名な一族
・都会の郊外に本家を構え、多くの門下生を育成している
・一人前になれば『修祓師:しゅばつし』を名乗ることを許される
・行政府の依頼を受けたり、警察庁や県警に出向したり、退治屋に協力したり