Prologue
闇の中に漂う感覚に支配される。 夢にしては心地よい感覚だが、頭に浮かぶ映像の内容は現実味がありすぎて生々しい。 見たくないのに強制的に見せられる映像に嫌気が差す。
薄れゆく映像の先にある、彼方の光。 その光に手を伸ばすと、風を感じ、木の枝が擦れ合う音が聞こえた。 視界がはっきりすると、淡い紅色と群青色が視界に映った。 淡い紅色は桜。儚く散って、風に乗って舞い踊る。よく見ると再生するように咲き誇る。
驚いて起き上がると、自分の服装の違いに気づく。 裾幅が広く、上品に桜の花を散らした黒地の振袖を紫の帯で締めている。 体の凹凸感もくっきりとしており、18歳に見えなくもない体型。
寝転んでいた桜の巨樹の枝から立ち上がると、綺麗な景色を一望できた。 群青色の空に浮かぶ大きな月は青白く輝き、数多の綺麗な星が煌めく。 桜の巨樹の丘を一周する灰色の池には蓮と蒲があり、極楽浄土の花が美しく咲いている。 その奥の、ちらほらと花が咲く緑色の草原は、風に沿って海のように波を作る。
心を奪われるほど美しい幻想郷。 穏やかな心地になる夜桜の幻想郷を眺めていると、意識が幻想郷から途切れた。
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