LOCK!夢主誕生日おめでとう〜!短編です。
ただあまり誕生日おめでとうみたいな雰囲気はありません。遊戯との未来のお話。付き合ってないかもしれないし付き合ってるかもしれない、ふわふわ設定です。
大人になったら、ひっそり楽しみにしていたことがあった。一つは煙草、もう一つは酒。どちらもやりすぎると身体に悪いことは分かりきっているし、嗜好品なのだから、別に強制的にするようなものでもないとも知っている。ただ、ずっと二十歳になるまではしてはいけませんと禁止されていたことから解放される。それがなんだが、不思議と高揚とした気持ちにさせたのだった。
「で、どうだったの?試したんでしょ?」
そうななしに問いかける遊戯の右手には、先程二人でコンビニに行った時に買った缶チューハイ。高校のときは、コーラの缶がいつもそこにあったのを懐かしく思う。
「うん。二十歳の誕生日にすぐね」
「あれ、皆でお祝いできなくてすごく悔しかったの覚えてるよ」
「え〜?そんなに?しょうがないよ、皆用事あったし。寂しかったけど、これが大人になるってことか〜ってなっちゃったけど……なんてね。遊戯も杏子も、みんな電話なりメールなりで祝ってくれたじゃない」
「それでもだよ!……遅れちゃったけど、改めまして、おめでとうございます?」
「ふふ、ありがとうございます?」
八月十八日は杏子とななしの誕生日だった。今までなら、スケジュールを合わせて、二人の実家か、ななしの住居に集合し、プレゼントを贈り、食事をしたものだったが、二十回目の誕生日にそれはかなわなかった。しょうがない。ななしや獏良は大学に進学し、杏子はダンサーになるため渡米。城之内はフリーの決闘者になり、各地の大会に出ずっぱり。本田や御伽は家を継いだり、手伝いをしたり。遊戯も祖父の店を手伝いながら、ゲームを作ってはそういった海外の大会を目標に、皆それぞれ忙しい日々を過ごしている。寧ろ今まで皆顔を合わせれていたことが凄いと言ってもいいのかもしれない。今日はたまたま時間があった遊戯と、ななしの部屋でのんびりすごしている。
湯が沸いたことを知らせるケトルのタイマーが鳴り、意識が目の前へと連れ戻される。ポットとカップにそれぞれ湯を注いでいく。
「あ、そうそう。話戻すけど、試したの。お酒とタバコ」
「良かった?」
「全然ダメだった!」
「ふはっ」
思い切り眉間に皺を寄せ、否定をするななしに遊戯は吹き出してしまう。余程駄目だったのだろうか、つらつらとその時のことを話し出す。
「タバコは……苦すぎてダメだった。上手く煙が吐けない?なんていうんだろうね。口内の味とかがダメだった。そういえば、お父さんが喫煙者なんだけど、タバコの匂いキツくて嫌だったの思い出した」
「なんで嫌だったのに吸ったの!?」
「私が吸うならいけるかなって」
「っていうかななし体弱いのに……」
「いや、いつの話してるの」
ポットから湯を捨て、茶葉と湯を再び入れて蒸らしていく。カップにはティーバッグを入れる。実はティーバッグは、湯を先に入れてからの方が美味しく飲めると聞いて、以降ずっとこうしている。
「お酒はどうだった?」
「初めてだったから、あんまり度数が高くない甘めのにしたんだけど。酔いが酷すぎて吐いちゃったし、次の日は頭が痛すぎて。お酒自体は美味しく飲めるんだけどさ」
「あー。明日を犠牲にしても飲みたいほどではない感じ?」
「ん。吐かない程度……あんまり飲めないんだけど、でも酔った時のふわふわした感じは嫌いじゃないよ」
何が面白いわけではないのだけど、楽しくて、笑ってしまう。ちゃんと床に足をつけて歩いているのに、ぐにゃぐにゃした道をいくような、平衡感覚が失われたような感覚が、寂しかった気持ちを塗り替えていくような気がした。翌日の二日酔いが酷かったために、すすんで手に取る頻度は少ないけれど、タバコよりは飲む。
「まあ、結局体質的にダメなんだけど」
杏子は強いらしいのに、どうして双子で差があるのかと肩を落とす。飲み屋を梯子などすれば二、三日間は使い物にならない自信がある。
「ふふ……」
「また笑って……。遊戯はお酒強いの?もう酔ってそうなんだけど」
「普通じゃない?記憶失うタイプの酔い方はしないなあ。あ、でもちょっと笑い上戸になるねって城之内くんたちから言われたから……」
「酔ってる?」
「あはは、酔ってるよ」
へにゃりと柔らかい笑みを向けられる。昔からの幼なじみでもあまり見た事のない表情に、ポットから新しいカップに紅茶を注ぐ手がブレそうになった。
「……酔ってるね」
「うん?そうだね、酔ってる」
やっぱりよってるね、そう口の中で転がしながら、遊戯から目をそらす。アルコールのせいか、赤くなった頬や耳を見るのがなんだが恥ずかしくなってしまう。逸らした視線は机へと向かっていく。
机はごちゃごちゃと遊戯が飲み干したアルコール飲料の缶やつまみが並び、その横にはななしが準備した紅茶に合いそうな菓子の箱が山を成す。
片付けるのが面倒だなあとぼんやり考えるが、明日のことは明日の自分に任せるのが一番だ。白い息を吐く、二つのティーカップを見つめる。片方はいつも好んで飲むアールグレイ。もう片方は、誕生日プレゼントに舞が送ってくれた茶葉。有名なブランドの、色々な種類の風味がブレンドされたものだというそれ。良い香りが漂うが、ななしにはどんな味なのかさっぱり見当がつかなかった。
「二つも飲むの?」
「飲み比べする」
「紅茶の飲み比べ、贅沢だね」
「うん。遊戯も飲む?」
「今お酒入ってるから、味わかんなくなりそう。今度ね」
「今度?」
「うん、また一緒に飲もう。今度は紅茶」
「……そうだね、そうしよう」