あの背中をおいかけろ!
ぽろぽろ 涙が零れ落ちる。
また負けてしまった。
心配そうにこちらを見上げるヌメラを抱きしめて謝る。粘液がなんだ、慣れっこだ。
「ごめんね、ヌメラ……。私が、ポケモンバトル下手だからいつも負けちゃって……。あんなことまで言われちゃった」
『バトルの指示だけじゃなくてポケモンも弱いのかよ』
『最弱のヌメラ使うとかマジなくね?』
ぐるぐるとライバルたちに言われた言葉が私を取り巻く。ヌメラ。カロス地方に引っ越した友人が送ってくれたタマゴから産まれた子。私の初めてのポケモン。
ビビりで、私の後をついてばかり。でもすっごく可愛い私のパートナー。
ある日テレビで見た、褐色の少年とともにジムを突破したヌメイル。自身の進化系を見たヌメラは自分も強くなりたい!と思ったようで。
いつも怯えてしまう近所のココガラに立ち向かうようになり。そんな、頑張り屋さんな私のヌメラ。
『もっとも よわい ドラゴン ポケモン』
何よ、何よ!!
私を馬鹿にするのは構わない。頑張るヌメラを馬鹿にすんな!!!絶対私たちでお前らぶっ倒すからな!!!
そう叫んで、馬鹿にしたライバルたちをぶん殴って逃げたのはつい先程のこと。
殴った手が痛い、なんだか胸の奥が痛い、泣きそうなヌメラに対して申し訳ない。
どうしよう、としゃがみこんで頭を膝に埋める。
無理だったのかな、ヌメラと強くなるなんて。
「いい啖呵だったじゃねぇか」
「え?」
私とヌメラの上に大きな影ができる。いやデカイなコイツ。見上げれば、思わず驚くような人物で。
「キバナ選手……!?」
ヌメラが強くなりたいと思ったきっかけのヌメイルのトレーナーであった。ガラルでも大きな注目を浴びている人。セミファイナルではダンデ選手に負けてしまったけれども。
現在、ナックルジムリーダーの後継者として活動しているのだとか。
「知ってんのか、ほらよリーグカードだ」
「わ、ありがとうございます……?」
リーグカード交換は癖になっていて、キバナからカードを受け取るときに反射で自分のリーグカードも差し出していた。カメラで撮ったとき、ヌメラが飛び込んできたせいで少しブレていてヌメラが写りこんでしまっているけど、お気に入りのもの。
「へえ、いい写真だ」
へにゃりと笑いかけられて思わず頬が熱くなる。何せキバナの顔立ちはかなり整っているから。
「なあ」
「はい?」
「ドラゴンタイプのポケモンってのは、総じて育成に時間がかかる」
「……ええ。そして育成も難しいと言われています。ドラゴンポケモンからの信頼を得るのも、清く正しい心でなければならない、というのも」
「まあ、信頼関係に関しては何も問題無いだろうよ」
私に抱えられたヌメラをひとなでしたキバナが白い歯を見せて笑った。そうだとでもいうようにヌメラが強くメ!と鳴く。
「諦めんのか?ヌメラはお前と頑張ろうとしてるのに、パートナーのお前が諦めるのか?」
ヌメラのまん丸な目を見つめた。
「……諦めません!私もヌメラもキバナさんのヌメイルの活躍を見て、強くなりたいって思ったんです!」
先程言ったように、ドラゴンタイプのポケモンの育成は難しい。だからこそ、ドラゴンタイプのポケモンを主としたキバナさんにだんだん憧れるようになったのだ。
「いつか、いつか私とヌメラがキバナさんを倒しますからね!」
「おーおー、待ってるぜななし」
ひらひらと手を振りながらキバナさんが去っていく。
「え、なんで私の名前……ああ、リーグカードか……」
「……ふふ、ねえヌメラ」
「メラ?」
「絶対強くなって、キバナさんに勝とうね」
「メ!」
あの勝気に輝くターコイズの瞳に、情けない私じゃなく、強くなった私を映すのだ!