番外編 恋する乙女……?

彼氏が好きすぎてツラい。
思わずよくありがちなフレーズから入ってしまったことを謝罪させて。

「でもウクレレちゃん、ダンデくんのファンだし一目惚れだった訳でしょう?両思いになって舞い上がってもしょうがないわ」

「ナナさん優しすぎじゃない……?従兄弟にリア充爆発しろってのろいかけられてきたばっかりなんだけど」

「あら、そうなの?」

失恋同盟を組みかけていた仲ですから。結局おめでとうって祝ってくれたけど。私もナツヤを応援しているよ……!!

「で、好きすぎてツラいを詳しく聞きたいの。あと彼氏からクスネプレゼントされた時の話とか」

「待ってなんでクスネがダンデくんから貰ったって知ってるの??」

膝元でぷうぷう寝息を立てて眠るクスネを見下ろす。赤茶色のふかふか尻尾を丸めているクスネ、くそ可愛い。もふもふしたい衝動に駆られるが、せっかくお腹いっぱいになってお昼寝している邪魔をしてはダメだよね。
ナナさんと話している場所はいつもの店長の喫茶店。相変わらず人がいない。話しやすいのはいいことだけれども。

「それにナナさんさ、私が彼氏出来たって言った時に『ダンデくんでしょ?おめでとう』って言ったじゃん……?なんで知ってたの……?」

まさか、ナナさんはエスパータイプ……!?ナナさんの相棒は、弟さんから貰ったヌメルゴンだけど。
ちなみにそのヌメルゴンは私のピカチュウと一緒に店長と遊んでいる。店長、ヌメヌメだけどいいの??

「あら、言ってなかった?私の弟、キバナなの。アイツ、ダンデくんともそれなりに仲良いからね。よく話題に出るの。勿論、そんな彼の彼女のこともね」

「言ってない!!弟がドラゴンストームとか初めて聞いたよナナさん!何で言わなかったの?」

「弟があれぐらい有名だと、関係を持ちたいからって私を利用したい人が多いのよね。『合コンするんだけど、人足りないし弟くん連れてきてくれない?』みたいな。ウクレレちゃんがそうするとは思わないけど、だから言ってなかったのかも。嫌な気持ちにさせたらごめんなさい」

「全然!びっくりしちゃっただけだよ!」

申し訳なさそうな顔をしたナナさんに思わず慌てた。まさかそんな理由があったとは。
でも本当に嫌そうな顔してたから、キバナくん関連(一部の人だろうけど)では良い思い出が無いんだろうなあ。

「そう?ありがとう!……じゃ、話続けるわね。キバナがよくダンデから惚気け喰らう〜って愚痴がきたの。思わず詳しく!!って叫んでしまったわ」

「待ってダンデくん惚気けてるの!?」

「そうみたい。ずっと探してた子と付き合えたからってすごく煩いみたいなこと言ってたわ。だから嗚呼ウクレレちゃん見つけられたのねって思ってたの」

「それ、キルクスで本人から言われてびっくりしたんだよね……。黒歴史呟きも見られてたし……1部スクショさえされていたし……」

「ウクレレちゃん、鈍いとこあるよね。スクショもキバナ見たことあるらしいわ。見せてもらったんですって。お前の気になるウクレレちゃんってどんなの?で、説明するときに」

「どれも見られたらヤバいのに……!?」

嬉しかったから少しだけスクショもしてたんだ……。垢が消えて悲しかったけど、これが唯一の救いだな!ってニコニコ写真のファイル見せられた私の気持ちよ。ダンデくんのロトムスマホから絶対消さねば……!ってなったけど、ロトムにびゅんびゅん飛び回って逃げられて、ダンデくんに微笑まれてやめた。
あれは確実にはしゃぐ5歳児を見守るパパの笑顔だった……。いたたまれなかった。


「そうかなあ、良い奴だなって言ってたけど」

「キバナくん、風邪ひいてるんじゃない??」

「風邪ひくようじゃ、年中短パンなんてしないわ」

確かに……。チャンピオンのとき、ダンデくんも短パンだったけど白のレギンスみたいなの履いてたけど、キバナくんの脚はどこも守られていない……。キバナ推しの友人はいつもキバナ様の御御足……!と叫ぶ気持ちも分からなくない。



「……何でウクレレちゃんの恋愛トークしたかったのに、キバナの短パンの話になったのかしら!?ほら話してウクレレちゃん!」

「えっとね、まず何から話そうかな……」



「じゃあ、クスネの話からね」

ナナさんとはしゃぐうちに、起きてしまったようでどうしたの?と首を傾げるクスネを撫でてやる。
ダンデくんと付き合い始め間のないうちに貰った子。

「ナナさんはクスネをあげるにいたった経緯知ってるの?」

「いいえ。キバナが、ダンデの野郎がポケモンのデータ見てうんうん悩んでたから、どうしたんだって聞いたら彼女にあげるポケモンどれにすればいいのか……って言ってたって聞いたから。最終的にクスネに決まったぐらいしか知らないわ」

「ダンデくんがクスネくれた原因ね、私がキテルグマに攫われかけたからなの」

「……え!?無事、無事なのウクレレちゃん!?いや、無事だからここにいるんでしょうけど……!」


「うんすっごく元気だから気にしないで!」

それでね……と私は思い出しながら話す。キテルグマに抱えられたときの衝撃を。
キテルグマは本来ワイルドエリアのみ生息するのだが、キテルグマの進化前であるヌイコグマはワイルドエリア+五番道路に生息する。
そして五番道路に訳あって訪れた私とピカチュウは怪我をしてしまったヌイコグマを発見した。
ポケモンセンターに連れていった方がいいのかもと思ったがヌイコグマにはすごく威嚇されていた。
せめて……と思った私たちは常備しているオレンのみを与え、1番怪我が酷かった前足にハンカチで手当をした。大丈夫だよ〜大丈夫だよ〜と近付けばどうにかなった。ポケモンセンターに連れていこうとしたら激しく抵抗されてしまって駄目だったけど。

「で、ヌイコグマと仲良くなって別れたんだけど、ある日キテルグマに抱えられてスタートダッシュされたんだよね」

「もしかして、そのヌイコグマが進化した子だったの?」

「そう!ハンカチを返したかったらしいんだけどね……。ピカチュウが焦ってダンデくんをスマホで呼び出したの」

キテルグマのダッシュの風圧に負けて気絶し、意識を取り戻せば睨み合うキテルグマとダンデくん(リザードンと私のピカチュウもいた)。
きのみの山と一緒に置かれた見覚えのあるハンカチを見て、以前のヌイコグマだと気付きなんとか場を落ち着かせた。キテルグマは時々木の実を持って遊びに来る。

まあそうこうあって、ダンデくんは逃げる手段を私に与えなくては……!と思ったらしく。

「だから特性がにげあしのクスネなのね?」

「うん。進化してフォクスライになっても、特性にげあしだからね」

ポニータとも迷ったと言っていたっけ。

モンスターボールをひょいと渡され、びっくりしたし受け取れないとも思ったのだけど、しゅんとした顔のダンデくん、同じくしゅんとしたボール越しに見えるクスネの顔に負けた。勝てませんでした!

クスネはダンデくんのポケモンたちにある程度鍛えられていたらしく。バトル?まかせな!と胸を張る姿がとてもかっこいい。ただ末っ子気質らしく、ピカチュウや私に甘えん坊なところはとても可愛い。これが……可愛いとかっこいいのハイブリッド……!?

「リザードンと遊ぶクスネとピカチュウマジ可愛いよ、そしてそれを見るダンデくんという神の並び……。シャッターが止まらないね……」

「貴方のダンデくん好きは相変わらずねえ」

「ふふ、だって大好きだもの!」

ナナさんと恋バナで盛り上がる時がくるなんて……!と思わず感動してしまった私でした。