鳥籠


背中に感ずる体温に、全て委ね、目を瞑る。絡んだ指先は優しく、幾人の其れを浴びたとは、考えられなかった。自分とは大差無い大きさの、細く長いしなやかな龍太郎の手。
全てが愛おしい、そう感じた。
「御前は、良い匂いがするな。」
鼻を癒す匂いは、梔子。
吸い付く白い肌は、桜。
厚く、色付いた唇は、桃。
全てが愛おしい、そう感じた。
「あ。」
漏れた声に導かれるは、唇と指先。
薄い唇が這う、其れだけで、声が漏れた。
鳥籠の鳥が鳴いた。
愛しい男の腕中は、鳥籠。
腕中の愛しい女は、鳥。
此れが幸福、そう感じた。




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