下さい


冷たい外気と共に、龍太郎も入ってきた。暖かい布団から出てている時恵の顔を見詰め、そっと笑う。つられて時恵も笑う。触れた指は、未だ風呂の暖かさを持ち、体温以上に暖かかった。
布団を開け、促す。
「さあ、湯冷めしてしまいますわ。早く御入りになって。」
「有難う。」
布団に入り込み、肘を付き、時恵の髪を撫でた。気持良さそうに目を瞑り、そっと、寄った。
「うん。如何した。」
縋る様に添う時恵に、微笑み掛ける。
「御慕い、申し上げて、居りますわ。龍太郎様。」
何度云っても云い足りない此の言葉。
「時恵…。」
自分の頬から少し手を離し、少し身体を捻り、唇を重ね合わせた。唇を舐めると、時恵は少し開き、龍太郎の舌を受け入れた。布の擦れ合う音に混り、小さな水音が聞こえる。頭の何処かで聞き乍ら、時恵は龍太郎の胸に手を置いた。押し返している様な、其れでいて違う態度にそっと笑った。
「嗚呼、龍太郎様。」
小さく呟き、腕を首に回す。
「時恵。」
力を加え、龍太郎の身体を自分の身体に、密着させた。感ずる重みに、体温に、時恵の体温が少し、上がった。時恵の頭を撫で乍ら、口付けを繰り返し、響く水音に頭がぼうっと熱を持った。
口内から舌を抜き、其の厚い唇に這わし、甘噛みをする。
「時恵の唇は、何時口付けをしても、旨そうだな。」
親指で、其の感触を楽しむ。綿の様に柔らかく、其れで居て弾力のある時恵の唇は龍太郎の気に入りだった。
時恵は少し笑うと、伸びていた膝を曲げ、足と足の間に、龍太郎の身体を収めた。龍太郎は視線を動かし、伸びた白い膝を追った。
「奇麗な、足だな。」
横目で時恵を見、手を這わせた。時恵の身体は反応し、回している腕に力を込めた。
「御前は、何処もかしこも、美しい。」
互いの熱い息が、掛かる。
「嗚呼、もっと。もっと、触れて下さいませ。」
其の言葉を待っていたのか、龍太郎の手は滑る様に太股を触った。小さな声と共に、時恵の身体が震え、言葉を待った。
「我が君…。」
此の言葉。
「嗚呼。」
息だけを伝える静寂が、心地良かった。




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