ぽっかりと、穴が開いた。
十六年前、宗一が独逸へ行った時、必ず戻って来てくれると信じた。そうして、変わらぬ笑顔で戻って来てくれた。
なのに。
同じ状況なのに、今度は戻らない確信があった。
幾ら呼んでも呟いても、声が聞こえる筈も無く、鼻で笑った。

―――忘れてくれ。

そう云った宗一の声が、一向に離れてくれない。
他が羨む物全てを持って居るのに、満たされない。贅沢な事だろうが宗一さえ傍に居れば、済む話なのに。

俺は、何処迄堕ちれば良いのだろうか。

誰に問い掛けても答えは無く、虚しい気持だけが身体を取り巻いた。
其の虚無感の中で、はっきりと自分が変わる感覚を知った。




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