子犬と狐


子犬の様だと感じた。誰かを見て、可愛い、等そう思わない自分にしては、彼女を初めて見た時、可愛いと素直に思った。其れが不思議。
琥珀色の髪に黒い目。透き通る程白い肌に身震いが起きた。人形と間違えそうな彼女の声は甲高く、好き嫌いが分かれる。
自分は、好き。
自分の声が高いからだろうと思ったが、自分の周りには此の様に高い声を持つ女が居ない事に気付き、惹かれた。
船が好きだと云う彼女の笑顔は、太陽を味方に付ける。眩暈を知りそうな笑顔とは、此れだ。
「御船に乗って来たの。」
だから、船が好き。生憎自分の乗る船は、彼女を運んだりはしない。
船の匂いとはどんな物かと聞けば、油と石炭其れから黒煙の入り交じる匂いらしい。


薔薇の香りに包まれ、潮の臭いを知り、日本に来た、私の可愛い英吉利生まれのセルロヰド。




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