LADY-BLACK GENTLEMAN-WHITE


真白な紙で貴方は其れを作って居た。私も真似て作るけれど上手くは出来無かったわ。

「此処が羽になります。こうして、頭を作り……、ほら。出来ましたよ。」

丸で魔法みたいと私は笑う。真直ぐ伸びた真白の羽は貴方の腕みたいで、見惚れた。
私は其れを思い出して貴方の居ない場所で、こうして折る。真黒の紙で。
其処に貴方は居ない。私の心にひっそりと居る。
「コハク、何してるの?」
「嗚呼ヘンリー。鶴をね、折ってるの。」
だけど如何して。思い出せ無い。鶴は折れるのに、貴方を思い出せ無い。貴方を思い出そうと折るのに、全く思い出せ無いの。
「鶴か。俺、折れるんだ。」
「何で?ダディに教えて貰ったの?」
「違うよ。十代の時知り合った日本人が何時も折ってた。」
「恋人?」
「残念だけど女の子だよ。」
彼が折ろうにも紙はもう無くて、仕方が無いので彼は不要な書類で折り始めた。
「意外と覚えてるもんだね、出来た。」
私が貴方を思い出せ無かったのは黒かったから。私は其れを知って居る。だから無意識に黒で折って居た。
私には辛いの。貴方を思い出すのは。けれど、貴方との時間を必要とするの。
愛して居たのよ。本当に。
貴方の声も匂いも体温も、私は思い出せるの。なのに顔だけは思い出せ無いの。
だって折り鶴には、幾ら白かろうが顔が存在しないんだから。此の鶴も貴方も、所詮人から作られた代物に過ぎ無いのよ。
貴方には感情が無いから。
此の鶴と同じ、唯奇麗で奇麗と囃し立てられるだけ。しっかりと人を引き付け、心に残る。
貴方は、折り鶴と同じよ。
複雑で奇麗で単純で、私が唯一作れる愛。






「何だ、此れ。散らかすなって云ってるヘンリーが散らかすなよ。」
「NoooooooO!俺の傑作がぁあっ」
「握り潰されたぁあっ」
「何だ、塵じゃ無かったのか。」
「違うよっ、鶴だよっ。失礼だなっ」
どんなに奇麗でも、必要の無い人間には一瞬で潰されるものよ。




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