f.-king honey


初めて浮気された時はショックだった。俺は若かった、好きであった、だから怒り狂った。其れでもハニーの浮気癖は、改善する処か悪化し、正直俺は無理だと思った。
唯、ハニーは酷く独占欲が強かった。
自分は浮気を繰り返す癖に、俺には其れを許さ無かった。
一度、我慢の限界に来た俺は報復として浮気をしてやった。付き合い初めて五年目にして、俺はハニーに報復した。
最初する前に罪悪感はあったけれど、時間も時間で、ハニーもしているに違いないと思っていた。
けれど違った。
俺はすっかり忘れて居たけれど、其の日は俺の誕生日だった。
帰宅した瞬間、ハニーの仏頂面を見た。互いに無言で、其れでも知れたのは匂いの所為だと知る。
俺達軍人は、休日で無い限り香水何て洒落た物は付けない。
浮気した其の日は、普通に軍服を着て居た。其処から香った香水は、官能的だった様思う。
軍服に香水、何て官能的だ。
下品で厭らしく、全く素敵だ。
「ハニー、其の匂いは何処から来た?」
寝室に行こうとした俺をハニーの腕が止めた。前を遮る腕を払う気力も無い俺は、さあ知らない、そう無気力に答えた。
「俺の良く知る匂いだ。」
「へえそう。最近流行ってるからね。」
「俺の上司と会ったな?」
ハニーの読み通り、俺はハニーの上司と浮気をした。
始めから仕様と思い会った訳では無い。偶然会い、話している内にハニーの話になり、其れは辛いだろうと、慰め抱き締められた。俺は最初警戒したが、ハニーの匂いがした。海の匂いにコッキングレバーを外し、空に向かって撃った。
空に向かって撃った場合、弾は如何なると思う。そう当然、当たる場所が無い為弾は自分に落ちて来る。
こんな風に。
行き成り殴られた俺は、吹っ飛んだ自分の眼鏡を見詰めた。
「御前、最低だな。」
「最低?」
浮気を繰り返すハニーは最低では無いのか疑問に思い、聞く変わりに殴ってやった。其れから真夜中だと云うのに殴り合いになり、俺達は如何して居た。
俺はハニーの額に、ハニーは俺の顎下に、銃を突き付け合っていた。
「先に引いて、キース。」
「ヘンリーが先に引けよ。」
もう沢山だった。
ハニーの浮気も其れに対して嫌な思いを知るのも怒るのも。自分が嫌な人間になっている様だったから。
俺が銃を離すとハニーも離し、俺は誰に云う訳でも無く云った。
「別れ様。」
ハニーから離れ、背を向け、身体半分を玄関から出し、同じ事を云った。
「もう無理だ。俺は君に付いて行けない。俺は、寛大じゃ無い。君の浮気は嫌だし、もう疲れたよ。」
抑、浮気を繰り返すハニーに五年も付き合う時点で既に寛大だと思うが、其れは云わ無かった。云えば、赤い海を見る羽目になるから。
「脅し?」
「いや、違う。」
「なら銃下ろしたら。」
床に座った侭のハニーは自分の頭に銃を突き付けていた。
「ヘンリーが居ないなら、死んだ方がマシだ。」
在り来たりな台詞を云うハニーは本気だった。俺を見ず、床を見て居た。
其れでも俺は、背を向けた。
「如何ぞ、死んで。そうで無ければ。」

I'll kill you. ...Honey.

俺達は互いに愛し過ぎて居る。俺がキースを殺さなくとも、キースが俺を殺す。そんな異常な考えでしか、俺達は愛し合えない。
糞みたいな愛情で、愛していると吐く。けれど、俺達には其れが似合いなのでは無いだろうか。
「愛してるんだ、ヘンリー。御前を怒らす事でしか御前の愛を感じられない。」
糞みたく歪んだ人格者を、俺は如何しても捨て切れず、
「判ってるよ…」
そうして抱き締める。




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