此れは浮気に入るか否か


独逸と仏蘭西が戦争を初めてから、英吉利領海には入れまいとRoyal Navyは忙しい。其れが気に障った独逸海軍に砲撃され、此れを宣戦布告と称した。
大陸を挟んだ向こう側では、日本が戦争をしていた。
仏蘭西血祭りひゃっほー、独逸様々だぜ、等と暢気な俺達陸軍は喜んで居たが、瞬く間に大戦となり、彼方此方で血が流れた。
気付けば半年以上、キースに会って居ない。詰まり、半年以上セックスをして居ない。キースは軍艦の上で部下相手に宜しくヤっているのだろうが、生憎俺は部下相手に宜しく等しない。優しくもしない。偶に後ろから殴ったりする。
何が腹立つか。和蘭が仲間になった事。独逸様々は何処(イズコ)、独逸側に迄腹が立って来た。
英吉利で最も役に立たない陸軍は、英吉利、和蘭、日本の同盟国軍を纏める様命令された。
独逸陸軍が英吉利上陸をする事は先ず無い。上から独逸空軍の連中が来たら陸軍は動かなければいけないが、何てったって陸軍だ。Not royal。
英吉利には不要なのである。
「あっはっは。不憫過ぎて泣けるっ」
日本は陸軍が統治する軍事国家、和蘭の陸軍元帥は陛下の息子。王子様が陸軍元帥。
何だ、此の贔屓は。
三国を纏める国の軍が、一番下の陸軍。
独逸も仏蘭西も亜米利加も、全部陸軍が一番偉い。なのに英吉利だけは違う。
歴史を見れば理由は明白だが、正直、Royalと戦争をしたいよ。負けは見えているけれど。
其れでも俺は、健気に海軍に祈りを捧げる。
キースの加護と英吉利の勝利を。
「暇…」
窓から見える青空にキースを重ね、欠伸をする。熱い程の日光。
スペインの太陽の様に、俺は熱い。
そんなキースの言葉を思い出し、熱く息を漏らした。
「は…………」
机に頭を乗せ、窓を眺めた。布越しに自分のを触り、実は俺って物凄く寂しい奴では無いのか?と、けれど其の手は止め無かった。
寂しい奴でも良い。此の青さに熱さは、そうさ、キースだ。
「キース…、キース…。愛してるよ…」
目を細め、窓から顔を逸らした。顎を乗せ、ふと見えた兎の置物。凄く有名な絵本の主役で、青い服を着ている。目を細め、左右に人参を持ち、本当に美味しそうに食べている。
少し微笑ましい気持になり、けれどこんな置物を相手にマスターベーションしても仕様が無いので、目を閉じた。其れだけに集中し、頭を空にした。
多分、其れが間違いだったんだと思う。
寸前で目を開け、視界に入ったのは窓では無く置物だった。
在の少し生意気そうな八重歯が頭の中に浮かび、ブラウンの髮。眠そうな垂れた目。俺を見下ろす顔。
口から出た名前は、そう。
「マウ、リッ………」
自分でも驚き、いや、自分が一番驚いている。
放心する手の中で、スペインの太陽の様に熱い精液を感じた。
湿った手袋を外し、其の侭ごみ箱に捨てた。けれど罪悪感と云うか良く判らない感情は捨てれ無かった。顔を擦り、口元を隠し恐る恐る窓を見た。
腹が立つ程奇麗な青空だった。
「マーシャル。」
「何…?」
紅茶を届けに来た中将は、挙動不審な俺に首を傾げ、空が如何かしたのかと窓を見た。けれど何の変哲も無い空。
「ねえ……」
「はい。」
「君、兎は好き?」
行き成りの質問に彼は首を傾げ、はあ、と頷いたので置物を手に乗せた。
「あげる…」
「本当ですかっ?娘が大好き何ですよ、ピーター・ラビットっ」
「あはは…、そう…。其れは良かった…」
「でも、宜しいのですか?頂いても。」
寧ろ娘さんに問いたい。
こんな親父が其れに使った置物でも良いのかを。
俺の心は海の様に荒れている。なのに俺の海に映る空は奇麗で、太陽は熱かった。
「嗚呼、キース。愛してるよ…………」
虚しく愛を、囁いてみた。




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