my brother


俺には、弟が三人居る。一番下は俺と五つ違いで、名前はウィルフレッド。此れが又可愛い。俺がロンドンに行くと云った時、泣き乍ら行かないでと云った。もう、可愛い。何で此奴はこんなにも可愛いんだろうか。
憎たらしいのは年子の双子共。名前はアルバートとジャック。性格は全く違うけれど、見分けは利き手だけ。もっと判り易く、顔とかに黒子があれば問題無いんだけどね。
アルバートは右、ジャックは左。其れしか他人には見分けの仕様が無い。
俺と母さんには判る。ウィルには良く判らないらしいけれど、良く苛める方がアルと認識してる。
ジャックは良い子何だけど、問題はアル。此奴は最悪だ。自分が悪事を働いて於いてジャックに擦り付ける。
ウィルを泣かせて於いて、泣かせたのはジャック、ジャックが悪い。其れにジャックが泣く、そして俺がアルに怒る。ウィルとジャックは父さん、俺とアルは母さんに性格が似ている。アルの性格はそうだな、俺を更に最悪にした感じ。気が合う訳は無い。
俺達の名前は母さんが決めたけれど、ウィルだけ父さん。本当はウィル、ウィリアムって名前になる筈だった。けれど母さんが、ウィルウィル呼んで居たから父さんが勘違いしてウィルフレッドになった。父さんの名前がアルフレッドだから。ウィリー、だったらウィリアムになっただろうけれど。アルには苛められるわ、父さんには間違った名前付けられるわ、本当、可哀相な子だよウィルフレッドは。
双子達の名前の意味は、知りたくないから詳しくは知らないけれど、名前の背景からして“象徴”。
アルバートは、在の女王陛下の在れですよ、在の方。痴がましい。床に額を擦り付けて土下座したら良いよ。
ジャックは、Royal Navy。そしてpirate。
正に英吉利の象徴。大航海と黄金期、そして母さん。此奴等、名前を逆に付けるべきだっただろう。ジャックは本当に良い子で、母さんは海軍になって欲しかったらしいけれど、警官になっている。アルバートみたいな阿呆を捕まると。
アルは、アルバートは……………。
何を血迷ったのか海軍に居る。
阿呆だ。アルは阿呆だ、阿呆の子だ。リンダ・ヴォイドの息子では、俺の弟では決して無い。
此れも全て、キースの所為だ。そうに決まっている。そうで無ければ納得行かない。キースが悪い。
キースとアルは気が合う。
何故だ。
何故何だ。
俺よりも兄弟らしいのは何故だ。
唯、キースも阿呆だ。嗚呼、阿呆同士気が合うのか。納得出来た。意外と簡単に答えが見付かった。其れともサディスティック同士だからか。…………両方にしておこう。
キースは未だにアルとジャックの区別が出来て居ない。部下なのに。元帥なのに。まあ、元帥様ですから“ジャック”と云う単語に反応するのは判りますがね。
“ジャック”は“海軍の”或いは“船の”と云う海軍用語だ。
国旗の呼び方が良い例。俺達陸軍、国民は“ユニオン・フラッグ”と呼び、キース達海軍は“ユニオン・ジャック”だ。
畜生、Royal Navy。何がロイヤルだ。御高く止まって何様だ、海軍様め。独逸海軍にやられてしまえ。
そんな阿呆なキースでも、流石に会話をすれば二人の区別は出来る。
アルはキースの事を“兄さん”と呼び、ジャックは其の侭“キース”と呼んで居る。兄の俺はハロルド呼ばわりなのに。ヘンリーじゃないんだ、ハロルド何だ。呼び捨て何だ。此の俺を。
陸軍元帥をだ。
ウィルとジャックは可愛いのに…可愛いのに………。

「アルバート可愛くないっ。ジャックと同じ顔なのにっ」
「…んだと?此の糞野郎が。鼻にストロー打ち込んでコカイン吹いてやろうか、ぁあ?陸軍ごときが海軍様に盾突いてんじゃねえよ、糞が。リハブじゃ無くて精神科行けよ、精神科。判るかー?ハロルドー。」
「如何して君はそんなに言葉が汚いんだ…」

本人は気付いて居ないが、アルバートの口調はリハブに居た頃のヘンリーと一緒だ。
俺がアルバートと気が合うのは、ヘンリーにそっくりだから。本人達は似て居ないと言い張るが、他人の俺がそう感じるのだから似て居る。丸で双子の様だ。

「はいはい、喧嘩両成敗。止めろ。」
「キースっ、アルバートを甘やかすのは止めてくれよっ」
「兄さんは何時もハロルドの味方だっ。俺は悪く無いのにっ」
「判った判った。喚くな。はい、仲直りして。」

俺、姉以外に兄弟は居ない筈何だけど、如何してこうも兄貴立場になるのだろう。
全く、困った弟達だよ。



「こうして見ると、キースって本当長男気質だね。実はあたしの息子だろう。」
「嗚呼、リンダ。光栄だ………。何時でも息子になる覚悟はあるよ。」




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