atheist


俺の頭は汚れてる。
でも其れって奴は実際、汚れた奴等が俺を作ったからに過ぎないんだ。
世間の常識を埋め込もうと、俺の頭を汚すんだ。
俺は元から汚かった?
実際問題、汚かったさ。
けど対した問題じゃ無かった筈。
俺の頭よりもっと、聖書が伝える常識の方がダーティーだった。

神を愛せって?
何で?
神は俺を愛しちゃ居ない。
十字架が其れを教えて呉れた。
在の歪な先っぽは、俺の身体を貫くんだ。

俺が人から踏まれる度、俺は十字架を踏んだ。
其れで救われる何て考えちゃないが、実際問題、俺は救われて居た。

周りは俺を罵る。
汚い俺を汚い言葉で罵る。恰も其れが正義であるかの様に。
最初は俺、何も間違いじゃないって思ってた。
でも誰一人として俺を理解して呉れる奴は居なかった、そう、母親でさえ。
母親でさえ、俺を理解し様とはしなかった。
俺でさえ、俺自身を理解し様と思えなくなった。
もう沢山だ。
幾ら頭のおかしい俺だって、殴られたら痛いんだ。
幾ら汚れた頭を持つ俺でも、言葉は理解出来るんだ。
常識で考えれば判るだろう?
だけど聖書を称える奴等に“悪識”は通用し無かった。
俺の事を理解する等馬鹿げて居る、常識はそう云う。
だから俺は常識に則り、自分を否定し続けた。
自分を隠した。
其れが常識だと、汚れた頭で考えた。
そして何時しか、俺自身でさえ見たくない汚い自分が出来上がった。

何で神はこんな生き物(同性愛者の俺)を作った?
俺は神の見せしめの産物。
俺の頭を一層汚して呉れた奴等に対する、常識から外れたらこんなに為るって見せしめ。
俺はサウンドバッグじゃない。
でも、人間でも無かった。
何かって聞かれたら、俺にも答えは判らない。
其れこそ、神のみぞ知るって奴。
中々に常識的な模範解答じゃないか。

常識とやらを詰め込んだ俺の汚い頭は大きく為る。
爆発寸前。
嫌って程常識を知った。
其の変わり、
愛って奴が何かは知らないけどな。

愛が何かと周りに聞いた。
女を好きに為る事が其れだと云った。
俺は、母親を好きに為ると云った。
常識で考えろと又云われた。
意味が判らない。御前等頭おかしいのか?
俺って何処迄、何処迄行ったら常識的に為るんだ?
俺は否定した、自分を。そして母親を。神を。
神は俺を愛しちゃ居ない。
其れは俺自身が一番良く知って居る。

神は俺を嫌った。
だから御返しに俺は神を嫌って遣った。
友達も恋人も居なかった。
ヴィオーラが唯一の友達だった。
猫が唯一の恋人だった。
満足かって聞かれたら、実際問題、満足な筈は無い。
世間は俺を理解しなかった。
俺は世間を理解し様とさえ思わなかった。
当然と云えばそうだった。

否定した。
全てを否定した。
俺を理解しない世間も、母親も、理解されない俺自身も。
もううんざり何だ。
罵られる事も殴られる事も疎外される事も。
痛いんだ、泣きたいんだ、常識的に為ろうと努めたんだ。

全てを否定して居た俺に
羽根を無くした天使はこう云ったんだ。
「君が一人ぼっちの自分を否定するのは構わない。でも今は一人じゃないだろう?二人で居るのに自分を否定するって事は、君を愛してる俺を否定するって事だよね?一緒に居る意味何て、無いじゃないか」
今迄散々全てを否定して来た筈なのに、
其の言葉は否定出来無かった。
「何を恐れて居るの?」
昔も今も変わらない。
一人に為るのを、恐れて居るんだ。
常識に乗っ取られる自分を恐れてるんだ。
常識に乗っ取られた俺は俺じゃない。
恐れるな、周りを。
恐れるな、神を。
恐れるな、俺自身を。

羽を無くした天使は
代わりにコンドームを持ってた。
代わりに俺への愛を持ってた。
俺は其の時思ったんだ。
神も悪くないんじゃないかってね。
非常識な天使、良いじゃないか。
神は若しかするととんでもない無い天才な美的感覚で、優れて変態的。
無神論者の俺はそんな天使にこう云うんだ。

愛してるよ、だって御前は神の最高傑作。

傑作だ。




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