意外な事実に驚いた
猫を連れて来るとふらりと折は出て行き、帰って来た姿に雪子と雄一は驚いた。
浮雲の時、確かに鬘は被っていたが折の自毛は腰迄伸びていた。尚且、色も白く声も高いので女に見えていた。其の髪が、ばっさりと無くなっている。
「髪、切っちゃったの…」
残念そうに雪子は眉を落とし、だって俺は男だから、と髪のごとく折は雪子の言葉を切断した。其れもそうか、と雪子は納得したが、納得行かないのは雄一だ。男だから、と云う理由で髪を切ったのだったら新は如何なるのであろう。新も又、折同様に腰迄髪を垂らしていた。若しかして此の理由は建前で、実際は新が居なくなった事による、共依存の解放なのでは無いか、そう物書き宜しく深読みをした。けれど実際の処、折は何も考えずに切った。髪が伸びていたのは誰も切る人間が居なかっただけであり、新の様に好んで伸ばしていた訳では無い。帰り道偶々美容室があり、暑かった為涼を求める目的で中に入っただけに過ぎ無い。
猫じゃらしで浮島と遊ぶ折は思い出した様に口を開いた。
「俺、髪切って気付いたんだけどさ。」
床に転がる黒は踏まれている。苛めている訳では無く、黒はこうして踏まれ乍ら其の足で遊ぶのが好きな、とことん自虐体質なのだ。だから新造の浮島にも苛められている。間違っても動物虐待等では無い。
「俺って実は、格好良いね。」
「今頃気付いたのか…?」
二人は普通に会話を続けるが、雪子は、矢張り木島の人間だ、と呆れた。雄一の息子、清人は酷くショックを受けた様に身体を揺らした。自分で云うのか其れを、と云う衝撃である。
「折、確か新の事を“彼奴は男前だ、吃驚する位男前だ”そう云ってたよな…?」
瓜二つの在の顔を。なのでてっきり折も自分を男前と認めているとばかり思っていた。しかし違っていた。
「いやね、俺は自分の事は、美人と思ってたんだ。」
清人、更なる衝撃を受けた。危うく持っていた本を落としそうになる。雄一御父様著の大事な御本を。
「ほうほう。」
何の疑問も持たず貴方は会話を続けられてしまうのね、と雪子も衝撃を受けた。
「男前って云うのは、新みたいな人間を指すと思ってたんだ。」
「嗚呼、成程。」
何処で、嗚呼成程納得出来たのだ、と雪子と清人は喉迄出掛かる言葉を飲み込んだ。
「だから鏡を見て、凄く驚いた。何だ俺も中々の男前じゃないか、と。」
「うんうん。」
此の二人は根本が同じだ、救い様が無い、と雪子達は無言で荷造りを再開した。
「浮島、俺、男前か?」
「なあぅ。」
「猫迄もか!畜生っ木島の血がっ!ナルシシズムの血がっ!」
我慢ならず、雪子は等々叫んでしまった。
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