目眩誘う四肢


長い指が、涎を垂らす口に無理矢理押し込まれた。御蔭で唾液は顎を伝い、軍服を濡らした。
「上も下も、大変だなぁ、雅は。」
楽しそうに低い声は笑い、雅を弄んだ。
「濡らすのは、どちらかに為さい。全く全く。」
一番嫌いな人間の口調を真似る拓也に、雅は眉を顰めた。
「止めて下さい。」
雅のきつい声に拓也の黒い目が揺らいだ。
「其れは、此の行為か?ん?」
一層深く指を埋め込む。上と下、両の指を。声を上げ様にも、深く捻じ込まれた指は舌を押さえている。
「嗚呼、御前の舌は、本当に旨そうだなぁ…」
舌を抓み出し、ぬるりと自身の舌を這わせた。此の侭食べられてしまうのではないかと錯覚を覚え、其れも良いと、雅は震えた。震えもがき、きつく縛り上げられた手首に、痛みが生じる。其れにさえ雅は悦を感じ、拓也の指を飲み込む箇所に力を入れた。
肌蹴た軍服、一糸纏わぬ露な脚、袖と一緒に縛ったのは拓也の心遣い。手首に痕は付けたくなかった。
「なあ、雅。」
喉の奥で笑う声。
「俺の事、好きか?」
「判り切った事を、聞かないで下さい…」
でなければ、誰が好き好んで男に等抱かれるか。拓也以外の男等、考えただけでも吐き気がする。
「そうか、良かった。」
拓也は笑い、秘部から指を抜き取った。身体を離し、離れた体温に雅は縋り付こうとしたが、頭を撫でられ、まるで忠犬が待てを命ぜられた様に、動けなくなってしまった。
「良い物、手に入れたんだよ。」
「良い物?」
聞く雅に薄く笑い、拓也は奇妙な代物を取り出した。縄の様な物が何重にも巻かれた、棒状の物。拓也は其れを雅に一瞬だけ見せ、水の中に沈めた。硬い代物は、少しばかり柔らかを帯び、男性の其れに似ている。
「此の間、熊本行ってな。」
水に付けた其れで遊び乍ら、背を向けた侭云う。
「うちの元帥様、可哀相に、営みが出来ない。」
雅は話の意図が判らず、黙って聞いていた。
「だから如何したもんかと考えて、此れに辿り着いた訳だよ。」
長い髪が揺らぎ、楽しそうに口角を上げる拓也。手には其れが握られていた。
「あの御嬢さんに其れは酷いかなって思ったんだけど、しょうがねぇ。」
空気を伝って拓也の冷たい体温が伝わる。雅はやっと触れれると、身体を寄せた。
「よしよし。良い子だな。」
胸に雅の顔を付け、頭を撫でる。
「肥後芋茎…知ってるか?」
「いいえ。」
「だろうな。」
云って拓也は、閉じていた雅の足を大きく開いた。指を入れ、卑猥な水音を響かせ、其の音に拓也は笑った。
「前以て云うけど、俺は好きな女程苛めたい性分なんだよ。大好きな顔が、涙で歪むのが、好きで好きで堪らないんだ。」
「井上大佐…?」
途切れ途切れに艶掛かる声を雅は出し乍ら、拓也の肩に顔を乗せた。
「だから、ひでぇとか、思うなよ。まあ、思っても良いけど。」
言葉終わり、抜いた指の変わりに、持っていた物を差し込んだ。ゆっくり、ずっと奥迄、其の植物の感覚を知らしめる様に。
「何です…此れ…気持ち悪いです…」
秘部に感ずる植物の違和感は、嫌いだった。
「だから、芋茎だって。云ったろ?暫く、其の侭で居な。」
雅の薄い唇に、自身の厚い唇を重ね、又身体を離した。今度は何をするのかと目で追い、信じられない行動を目にした。拓也は椅子に座り、口元に笑みを浮かべ乍ら酒を飲み始めた。にたにたと、気味の悪い笑みを浮かべ、じとりと雅を見ていた。
「あの…井上大佐…」
「御前何時になったら、其の井上大佐って云わなくなるんだ?」
「其れは…」
此れは、其れに対する罰なのだろうか。しかし、そうとは考えられなかった。
雅は脚を閉じ、俯いた。こんな秘部は、流石に露にしたくなかった。
「閉じんなよ。」
「嫌、です…」
「見えないだろうが。」
「見ないで下さい…」
「其れじゃあ意味ねぇだろう。」
酒の入ったグラスを持ち、拓也はゆっくりと雅に近付いた。酒の臭いが、鼻を突く。芋茎を咥えた其処に、拓也は酒を少し垂らし、其の冷たさで開いた足を、無言で縛った。
「此れで、閉じれねぇだろう?」
眉を上げ、鼻で笑う。手も足も縛られ、秘部には芋茎。羞恥に塗れた雅は、震えた。其の時だ。じんわりと秘部が熱を持ち始めた。其れは本の一瞬で、瞬く間に雅の秘部は強烈な熱を持ち、蠢き始めた。むず痒い嫌な感覚に、涎が垂れ、背を仰け反らせた。どっと、目から涙が溢れ出た。
「効いて来たか…」
相変わらず拓也は酒を飲み、其の姿を笑い乍ら見ていた。
「たっいさ…っ。何ですか…っ此れっ」
「だから…此れで三度目だぞ。」
そんな事を聞いている訳でないのは判っているのに、拓也はあくまで其の代物の名前を云った。
「気持ち、悪いです…っ本当に…」
「時期に、想像も出来ねぇ快楽が襲ってくるぜ。今は気持ち悪くてもな。」
芋茎本来の効能に加え、拓也は酒を垂らした。其処で拓也は考えた。今度から、水に浸すのではなく、酒に浸そうと。にやにやと雅のもがく様を、楽しそうに眺めていた。
開かれた雅の足の間に拓也は座り、酒を口に溜め、雅の口を塞いだ。強過ぎる洋酒の味に咳き込み、喉の熱さを知った。
「此れは…」
「ウィスキーだよ。最近此れに嵌ってるんだ。」
赤褐色の液体入るグラスを目の前で揺らし、同じ様に目を揺らがせた。グラスを置き、拓也は又雅の唇を塞いだ。甘い其の声を飲み込み、秘部に右手を伸ばし、硬く膨れた突起を優しく撫でた。強烈な快楽に強く目を瞑る雅に反し、拓也は視線逸らした目を薄く開け、舌を絡ませ続けた。くぐもった声と、水音が響く。離れ様とする雅の顔を、左手できつく押さえ込んだ。
雅の身体は大きく震え、拓也の舌を噛んだ。悪気があってではない。無意識に。其の痛みは残る酒の味に血の味を混ぜ、頭が揺らいだ。今迄強く瞑っていた雅の目が薄く開き、黒目が怪しく動いている。快楽で、頭が可笑しくなった証拠だった。其の目に拓也は喉の奥で笑うだけだった。声は、消えた。声を出すのを忘れる程、雅は快楽に支配されている。
唇を離し、魚の様に口を開閉させる姿を顔を緩ませた拓也は見、何度も頭を撫でた。
「可愛いな…御前は本当に可愛い…」
小さく息を吐く雅に、拓也は芋茎を奥深く埋め込んだ。
「はあっ」
目を見開き、又与えられた快楽に声を取り戻した雅は、頭を振った。
「駄目だ…歪む…此れ、抜いて…御願いだから…」
低く呻いた雅の要望に応える事はせず、奥に押し当てた侭回転させた。全身に虫が這いずり回った様な感覚。其れから逃れる様に雅は身体を震わせ、強烈なオーガズムを受けた。
震えは痙攣に変わり、止まる事を知らず、拓也の心も痙攣させた。
ずるりと糸引く芋茎を抜き取り、床に捨てた。
「よしよし。」
自分の胸元で呼吸を荒くする雅の身体を支え、拓也は腕と脚を開放した。だらりと人形の様に手足を伸ばす雅。此の侭腕を放したら、床に伸びそうだ。立つ事は絶対に不可能だろうと、放心した身体を持ち上げ、ベッドに運んだ。
ベッドに寝かせ、伸びる腕から軍服を脱がし、覆い被さる。拓也の着物は、全く乱れていない。薄く目を開け、未だ痙攣の治まらない雅は、全く拓也を見ようとしなかった。目を動かす事も、今の雅には出来ないのだ。其の雅の顔を優しく包み、自分に向かせた。
「井上、大佐…」
「ベッドの上では、何て云うんだっけ。」
呼吸一つ乱さず云う。何時だって拓也は、雅の上に居るのだ。
「拓也…さん…」
「そう、良い子だな。」
ぞくりと拓也の背中に快楽が這い、力無い雅の足を持ち上げた。濡れている秘部に、硬くなった自身を押し付け、薄く笑う。どくどくと脈打つ雄は、容易く雌を刺激した。
「入れたら御前、如何なるんだろう。」
雅の腰が震え、無意識に秘部を押し付けた。
「何?未だ欲しいの?充分楽しんだだろう。欲張りねぇ。」
「や…だ…」
「何が?此れが嫌なのか?酷い話だぜ。」
「違…」
むず痒い秘部は、早くと中から液を溢れ出させてた。雄を濡らす雌の涎は、雄からも涎を垂れさせた。
雅は力の入らない腕を伸ばし、そっと触った。自分の体温よりも熱い雄。粘着質な水音がし、雅は其の侭捻じ込ませ様とした。しかし、其の手を拓也は止めた。
「嫌って云ったじゃねぇか。」
「云ってない…」
快楽で濡れた目を舐め、雅が手を離したのを知ると、矢張り口元に笑みを浮かべ乍ら、拓也は一気に腰を沈めた。雅の身体が強張り、力を無くしていた腕を首に回した。しがみ付き、拓也から与えられる快楽に、溺れた。




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