Engel des Todes‐Mein Engel‐


君の目は最高級のショコラーデ。
流れる髪は、今から形を成す甘さの無いショコラーデ。
少し色付いた唇は、チェリーの味がするショコラーデ。
此の手は、そんなショコラーデを私の口に運ぶ。
身体は…?
食べた事も無い極上のショコラーデだろうね。
彼はそう、見た事も無い顔で私に云った。
神経質な顔を一層際立たせる様に後ろに撫で付けられる前髪は、其れを隠す様に垂れて居た。
全てを怯ます蛇の目は、薄く閉じて居た。
性格が知れる指先は冷たく、微かな薬品の匂いを私に教えた。

未知為るショコラーデ…

そんな私の身体は、彼の手に容易く溶けた。
彼が正統派のカトリック教徒であるのは知って居た。だからこそ私は、自分の汚さを痛感した。
彼以外の肉体を無理矢理知った私の身体。
そんな私に、彼は触れる。
彼奴等の舌が這い擦り回った此の身体に、ショコラーデしか口にしない舌は触れる。何度洗い流しても其の感触は拭えず、何度も何度も身体を擦り、細胞諸共剥がす様に爪を立て、ナイフを向けた。御蔭で私の身体は傷だらけ。其れでも彼は、今迄貫いた信念を私が感触に爪立てた様に、傷を付けた。
項に捺された焼き印にさえも、彼は口付けた。
「愛してるよ…」
神経を逆撫で刺激すると良く云われる彼の声は、全くの正反対の声色で、私の脳に愛を伝えた。
煙草の臭い、笑う声、繋がれた手首から聞こえる金属音。息をすれば込み上げる今にも吐きそうな在の味と臭い。触れる手と舌。
其れを私は、脳に叩き付けられた彼の一言で薄くさせた。
完全に消え去る事の無い記憶。
何年何十年経っても、何度彼が私を愛してくれても、決して消えない記憶。
彼も其れは理解して居た。だから此れから先、彼が触れた記憶が出る様にと、冷たい指先が身体を悪戯に触る度、ショコラーデとアリアを私に与えた。


多忙な貴方は屹度、数日後には私を忘れてしまう。
其れでも良いの。
私の身体には貴方が居るの。
くれたハーケンクロイツで、貴方を愛せるの。
天使であり、エーデルヴァイスでもある其の揺らめく白さに、アリアを重ねるの。
貴方の愛する墺太利で、沢山のショコラーデを作って、沢山のエーデルヴァイスに囲まれ、そしてアリアを子守唄に貴方を待つの。




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