夢より素敵な夢心地
ノック音に白虎の頭がゆっくりとドアーに向き、釣られたわいは同じに顔を向けた。開けられたドアーの間から香った芳香に頭の芯が痺れ、白虎は其の匂いが大層気に入ったのか溜息に似た息を吐いた。虎でさえも官能的な世界に誘う匂い、人物。中将にウィンク一つ、長く魅惑的な足が毛足の長い絨毯に乗った。
「はぁい、八雲ちゃん。How are you?」
あはんと溜息一つ、片腕を上げ、屈折した片足をドアーに付け、豊満な肉体を擦り付ける様にドアーに凭れ掛かる彼女は云った。
臀部に迄伸びる長く美しい光沢靡かせる髪は揺れ、其の揺れに乗って芳香は辺りに漂った。
「レイディ…」
驚きで掠れたわいの声に白虎の咎める視線、然し彼女の艶やか為る視線の方にわいの感情は向いて居た。
彼女の靴音を消してしまう程厚い絨毯の上を彼女は歩く。此れはそう、ルージュカーペット。
「加納に此れを渡して頂けて?在の人今、議事堂に居るでしょう?中に入れないのよぅん。」
英国海軍の印判押される封筒をわいに渡し、絨毯よりも柔らかく暖かそうな毛皮を流し、彼女は云う。
「暑く、無いんですか…?」
夏の格好とは思えず堪らず聞いた。
「そうね八雲ちゃん、白虎は暑いかしら。」
「白虎?」
「今のあたしは白虎と同じ。脱いだら捕まるわ。」
再度あはんとウィンク貰い、身体の熱さに堪らず勃起したのは男の性に思う。
「裸…?」
「見たい…?」
白虎がソファに横たわったかと錯覚する程毛皮の重量は凄く、こんな糞熱い中汗一つ見せない所を見ると、強ち嘘では無いかも知れない。
「レイディ…」
「あら、駄目よ。」
毛皮から覗く、昔散々妄想膨らまし本能に従った足に辛抱堪らん様為ったわいは両手をソファに付け彼女の顔を覗き込んだが、無残にも張り手を食らった。
「浮気は駄目よ。」
ゆっくりとソファから起き上がり、肩甲骨そして背中の奇麗な線が見える程毛皮を抜いた。本来なら洋服の生地が見えても良いのだが其れは見えず、言葉通り、なのであろう。
「レイディ………っ」
「必ず、渡してね…?」
芳香が鼻を貫く。べったりと彼女の紅が頬に付着し、蛇みたく首に絡まった筈の手はドアーに伸びた。
「悪女は去り際も悪女で無いと、ね。See you.」
中将の閉めるドアーの間からウィンクを貰い、廊下に響く靴音は脳に叩き付けられた。
本の一瞬の官能的で甘美な倒錯世界。
彼女だけが為せる、創造世界。
わいは如何やら、思春期と同じに彼女が作り出す世界に妄想を馳せて居る様だ。
〔
*prev|1/1|
next#〕
T-ss