関係
細い、暖かい手が、頬に触れる。望んでいた事なのに、僕は緊張した。
無意識に震える体を、君は笑った。
「怖くないわ。」
そう、何も恐れる事は無いと。
此の震えは、一体何処から来るのだろうか。
羞恥、恐怖、歓喜。一体どれと云うのだろうか。
僕は何も云えず、君の体温を、感じていた。
甘い香りが、鼻を擽る。其れだけで、眩暈が起きそうになる。
望んだ現実。其れが手に入ろうとすると、人は怖くなる生き物。其れは知っている。
「姉さん。」
触れた唇に、電流が走る。
知れず交わした口付けとは全く異なり、其れは僕を蕩かせた。
頬から離れた手は、僕の手を握り、君の体へと伸びる。躊躇う僕に、君は優しく笑った。
「怖くないわ。」
又、同じ事を云う。
初めて触れる、其の柔らかさに、眩暈が起きる。
細い首、柔らかい肌、其の知らぬ女体は、僕を誘う。
「ふふ。」
不適に笑う君に、僕は不安を覚えた。
君は、不自然に膨れ上がった僕の足の付け根に視線を落とし、笑う。其れが、どんなに恥ずかしい事か。
「姉、さん。」
消えそうな声で云った。
「恥ずかしいかしら。」
其の問いに、僕は無言で頷いた。今にも羞恥で、気絶しそうになる。
「何も恥ずかしい事じゃないわ。此れは、自然な事なの。」
「自然。」
「そう。」
君は笑って、掴んでいた僕の手を、胸から離し、スカートの中に誘った。想像していた其の中は、胸とは比べられない程の、肌触りだった。
内股を撫でる度、君の息は、妖しくなる。其れが、僕を狂わせる。
感じる水気。其れが一体何なのか、僕には判らなかった。唯、其れを知った時、僕の雄の一部は、固く、痛い程に張り詰めた。
知りえぬ感覚。
僕は其れに、微かな恐怖を覚えた。
「判るかしら。」
触る水気。
僕は、小さく頷いた。
「男の人は、こうして自己を象徴する。女も同じ。変わりに、こうなるの。」
そう云って、君は、其の潤んだ箇所に、僕の指を埋めた。
其の熱さ、柔らかさ。僕は息を吸った。
「如何かしら。」
「凄く、其の。」
「ふふ。」
君は笑い、唇を重ねた。
「好きに、動かして。」
そう云われ、動かす気は全く無かったのだけれど、雄としての本能が、指を動かした。
其れに合わせて、荒ぐ君の声。
掌に溜まる水気。其れを感じた。
湿った其処は、僕の指を飲み込み、ある一箇所を掠めた時、きつく締め付けた。
「此、処。」
自分で何を云っているか判らないが、そう云った。
「此処が、気持ちいの。姉さん。」
「そう。其処よ。」
息を荒くし、僕の指を感じる君は、美しかった。
動かす内に触れた、判らぬ突起。瞬間君は、高い声を出した。其れが酷く、雄の本能を刺激した。
「拓也、其れは。」
「駄目。見付けた。」
埋めていた其処から指を抜き、触れた突起に、指を這わす。そうすると、君は狂った様に、声を出し始めた。其れが、至極快感。
僕の肩に顔を埋め、声を荒げる君。僕は其の声を、楽しく聞いていた。
「嗚呼、良いわ。凄く良い。」
息の様な声を出し、背中に腕を回す。立てる爪に痛みを覚えながら、指を動かした。
溢れ出る水気に、僕の笑いは止まらない。
君をこうする事に、僕は羨望を抱いていた。
床に爪先を立て、快楽に身を任せる君。其の力が無くなった時、僕は初めて、君を支配出来た様感ずる。
荒い息を整える事もせず、僕の体に体重を掛ける。痙攣を繰り返す足に、笑ったのは、弟の僕ではなく、雄の僕だ。
自身が痛くなるのは当然で、そんな君の姿を見て迄、弟で居られる程、僕は出来ていない。女と交わった事は無いが、どうすれば良いか、本能が教えてくれる。
僕は其れに従い、君をベッドに沈めた。
足を持ち上げ、露になる君の太股。其れを此の目に見るのを、どれ程望んだ事か。
肌蹴たスカートから見える太股に、喉を鳴らし、唇を付けた。其の暑い体温。僕を狂わせる。
夢中で舌を這わせ、そう、君の声を聞いていた。
さっき迄、指を這わせていた其処は、視覚で僕を誘う。そうして、僕は誘われる侭に、顔を寄せた。
味わった事の無い味に、僕の舌は勝手に動く。どうすれば良いか、全く判らないのに、僕の本能は、其れを的確に教え、君の本能を、呼び出す。
其れが、至極快感。
喉に張り付く様な其の味を、僕は堪能した。
堪能して、堪能して、そうして君を、又痙攣させた。
最早、僕の知っている、姉の声ではない。雌に成り下がった、女の声だった。
初めて聞く其の声に、僕はもう、自我を失っていた。
震える手が頬に触れ、雄を誘う雌。其れを望んだのは、僕だった。
深く息を吐き、強く脈打つ自身を、君の其処に、沈めた。
全ての関係が壊れ、もう、元には戻らない事を知った瞬間だった。
君はもう姉ではなく、雌。そして僕は、弟ではなく、雄になった。
望んだ関係に、僕は唸った。
僕の腕の中で、下で、声を荒げる君。
其れがどんな罰だろうと、知らぬ顔をしてやろうと思った。
「姉、さん。」
云った言葉に、君は声を止めた。
「拓也。拓也。名前を呼んで頂戴。」
腕の中に居る時は、女で居させて。そう君は云った。
だから、呼んだ。君の名前を。何度も何度も呼んで、此の時だけは、本能に従おうと、君を求めた。
「愛してるわ。」
聞こえた言葉に、僕は笑い、唇を重ね、熱い汚れた罪を、君の中に吐き出した。
背中に走る爪の痛さに、云い様の無い快楽を知った。
男と女というものは、本能で成り立つものだと、僕は知った。
其の本能が、どんな罪だろうと、僕は構わない。
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