ダイヤモンド・ヴィラン
お昼休み。みんなでお弁当を食べ終わり他愛もない話をしていると、お弁当後に席を外していた友人が、プラプラとポップな色味の棒携帯をその綺麗な手にぶら下げて帰ってきた。
「おかえりー。どこ行ってたの?」
「先輩に呼ばれて…コム、持っててって渡されちゃった」
満面の笑みで顔の横にそのカラフルな携帯を掲げる嬉しそうな友人に、私の周りの子たちが黄色い声を上げ、お決まりのように羨ましを連呼する。
嬉しそうにみんなからの冷やかしを受ける彼女は、先週例の先輩と付き合い始めたと3日ほど前に聞いたところだった。
正直羨ましくないわけがない。彼氏のコムを持っているというのは、一種のステータスのようなものでもあった。首からポップな色合いのそれを提げているだけでおそらく恋人がいるであろうということは分かったし、同時にそれだけ何時間も電話をするほど親密で仲がいいという証のようなものだった。1台購入・契約すればもう1台付いてくるというようなキャンペーンのせいもあり、2台で1つのような、カップルリングならぬカップルフォンのような役割を果たしていた。
「ナマエもコム持ってるの?」
中学から付き合ってる彼氏いたよね?そう続ける友人たちに、笑みで誤魔化すしかなかった。
「彼氏があんまりそういうの興味なくって」
毎回こういう質問を受けるたびに笑って流すのが癖になった。彼氏が興味ないとは言ったけど、本当のところどう思っているのかなんて知らない。聞いたこともないし聞く勇気もない。
聞けば欲しいと言っているようなものだし、めんどくさいことは嫌いそうなのでおそらくめんどくさい女も嫌いだろう。私は竜胆のことが至極好きなのでそんなことで嫌われるのはごめんだった。
嫌われるくらいならこんなことは屁でもない。
「ナマエは欲しくないの?」
「ん〜欲しくないわけじゃないけど…そんなことより!先輩とどんなラブラブ電話してんのぉ?」
そんなに深く突っ込まれたことはなかったので思わず本音が口から滑り落ちる。しまったと気づいた瞬間に素早く冷やかしに転じて友人に犠牲となってもらった。友人も満更ではなさそうなので問題はないだろう。
標的を友人へと定めた彼女らを眺めながら、今日もどこで何をしているのかわからない金髪メッシュに想いを馳せた。
放課後、駅前のクレープを食べに行こうとか、プリクラを撮りに行こうとかそんな話をしながら友人と4人で校門へと向かう。
正門の辺りが騒がしい。明らかに一箇所を見ながら避けていく人間と立ち止まり見つめる人間近づいていく人間、と様々ではあるものの見ている場所は一点だった。
「なんだろうね…なんかあるのかな?」
友人の言葉を右耳に受けながら、先程から人の隙間からチラチラと見える金髪にラムネのような水色のメッシュに嫌な予感がした。
人波に乗って通り抜けるかと画策していると、ポケットに突っ込んだ携帯がたった一人にだけ設定している着メロで鳴り始める。友達の視線が私のポケットへと注がれる。そっと取り出せば“着信:竜胆”の表示。
「りゅう、たん…?」
「りんどう、ね」
懸命に読んだ友人の読み間違いを訂正して、携帯を開き通話ボタンを押す。
「……もしもし」
『出んのおせぇ。どこ?』
「…もう帰った」
『嘘つくな。こっちはお前の授業が終わる前から待ってんだよ』
暇人か。
きょろきょろと動いている頭がなんだかおかしくて、小さく笑った瞬間にぴくりとこちらを向いた。
『いた』
目の前の金髪メッシュの口が動くと同時に、通話口から声がする。
見つかってしまった。この距離で声なんて聞こえるはずないのに、まるで私の声に反応したようにこちらを向く竜胆に胸がぎゅうっと痛くなる。
校門に凭れていた背中を離し、人波を掻き分けてやってくる人物。紛れもなく彼氏の竜胆だった。
耳元で通話口からプッという音とプーップーッという通話遮断音が響く。それを耳から離して閉じるとほぼ同時に竜胆が私の3メートル圏内に入った。
「何してんの?」
「迎えにきた」
私の目の前に立ちはだかる男に友人たちは一様に「え、誰?」という視線を投げる。
あー、と今まで一度も紹介したことのない彼氏を前にどうしたものかと迷う。そもそも竜胆は紹介とか平気なのだろうか。友人たちが彼氏だと知って騒がないわけがないよなぁと考える。
「え、ナマエ…この人は…?」
遂に友人の一人が声に出して聞いてきた。
「あー…」
なんて言おうかと迷っていると僅かに眉間に皺を寄せる竜胆。その皺はどっちの意味の皺だ?言うなよ、なのか?言えよ、なのか?
正解がわからず視線を彷徨わせて吃っていると、グッと肩を引き寄せられた。
「こういうこと」
半ば抱き寄せられるような形になり、友人たちから黄色い声が炸裂する。ついでに友人以外の人間からも炸裂した。
あまりの気恥ずかしさに竜胆の胸を押し返して僅かに離れる。
「彼氏、です」
改めて友人に紹介すると、今度はペコリと頭を下げる竜胆。
紹介してもよかったのか。
「わぁ、初めまして…!ナマエ全然彼氏さんのこと教えてくれないからちょっと心配してたんです!」
「ね!お会いできてよかったです!」
騒ぎ出す友人に嫌な予感がする。悪い子たちではないが興奮すると口数がやたらと増える傾向にあるのはこの子たちと一緒にいて痛いほど感じたことだ。
余計なことを言う前に切り上げようとした瞬間、眉間に皺を寄せた竜胆と目があった。
今度はなんだ!?なんの顔!?
私が困惑している間に友人の話に混ざる竜胆。
「こいつ、俺の話しねぇの?」
「こっちから振らないとしないですねぇ。今日もコム持ちたいなんて初めて聞きましたし」
「コム持ちたい?」
「ちょっ、と!?」
私がいろんなことに混乱している間に、予想通り余計なことを口滑らせる。止めようにももう遅かった。友人の言葉を正確に拾った竜胆がチラリとこちらを向く。
「そうなんです!この子コム持ちたいみたいなんですけど、彼氏がそういうの興味ないからって言ってて…今日ちょうどその話してたんだよね!」
私に振るな。
竜胆の視線が痛い。あーとかうーとか言葉を濁していると、ふーんと竜胆のなんとも言えない相槌が聞こえた。
「あ、いや、違うくて……」
ひやりと冷えた心臓に目の前がぐらつく。そう誤魔化そうかと考えてしどろもどろになっていると、今度はふぅと息を吐く音が聞こえた。
「だる」
たった一言。それだけで世界が終わる瞬間があるのだと、この時はじめて知った。
ただならぬ私たちの雰囲気に友人たちも段々と焦り始めるのがわかる。だけどもう時すでに遅し。どうしようもないのだ。
異様な緊張感に包まれた空気の中、無機質な着信音が鳴り響く。
舌打ちをひとつ落とした竜胆がポケットから乱雑に携帯を取り出すと、そのまま電話に出る。いくつか言葉を交わした後返事もそこそこにプチッと切ってしまった。
「兄貴に呼ばれたから行くわ」
「あ、うん…」
踵を返して校門を出ていく竜胆の背中を眺めながら絶望していると、人集りができていた背後から男子生徒の声が聞こえた。
「あれ…“六本木のカリスマ兄弟”の弟の方じゃね…?」
友人が首がもげそうな勢いでこちらを見るのがわかった。
あぁ、絶望の先にもめんどくささが存在するのか。
竜胆が今何を考えているのか、友人に彼のことをどう説明するか、私たちのこれからがどうなるのか。考えることが多すぎて頭が痛くなってきた。
校門での騒動から数日が経った。
あれ以降竜胆からの連絡はない。私から連絡というのもできず、結局なんの弁解もできず、竜胆がどう思っているのかも聞けずな状態が続いている。
元々どこで何をしているのかわからない人物ではあったが、竜胆自身見た目や言動に似合わず割とまめな性格だった為毎日それなりに連絡は取り合っていた。
友人たちにはあの後しこたま謝られたが、口を滑らせてしまったのは彼女たちだったとしても、そもそも自分自身の意気地のなさが招いた結果だし、と笑って許した。
「どうすればよかったのかなぁ」
最近のトピックになりつつある“あのとき私はどうすれば!?”が今日もまた脳内を占めていく。
彼氏があの灰谷竜胆なので正直今までも周りに相談なんてし難くて、いつの間にか誤魔化して濁す癖がついた。私にとっては普通の未成人男子でも、他の子たちにとっては違う。特に都内で真ん中くらいの超が付くほど平均平凡なこの学校に通うような子たちの中では、彼は普通の男子ではなく“不良”なのだ。
まぁ私からしても“良”ではないが。少なくとも、彼に対して恐怖や畏怖の念は持っていないという意味で、なんの変哲もない普通の男子ではある。
お昼休み、またいつも通り友人と4人で机を合わせてお弁当を食べる。授業の話、今日あった先生のドジの話、バイトや部活の話…取り止めもなく話していると、ひとりの友人が突然口話題を方向転換してきた。
「そういえばナマエは彼氏さんと最近どうなの?」
今までそんなに切り込んでこられることがなかった分、突然のことに驚き口に含んだ卵焼きが喉に詰まりかける。
そもそもそういう話題を振られても私が答えもせずに曖昧にしてきたので、友人たちもあまり振らなくなっていたのだ。先日の一件で彼氏が灰谷竜胆ということがわかったので、その効果も手伝って雰囲気的に恋愛系の話題自体を避けるようになっていた。そんな中での爆弾発言である。
「え、あ…彼氏、と?」
「うん」
なんの邪気も感じない顔で頷く友人。他の2人は「マジか」という顔で固まっている。
「あー、こないだから連絡とってない、かな…」
「そっかぁ、やっぱ気まずいよねぇ」
なんでもないように、まるで彼女にとっても竜胆が“普通”であって、私たちが“普通の恋人”であるというように話す彼女にこちらが戸惑ってしまう。
「竜胆のこと、知らないわけじゃないよね…?」
「ナマエの彼氏さんでしょ?知ってるよ〜!六本木なんてこっから近いし、この辺に住んでて一度も聞いたことなかったらモグリだよ」
もしかしてバカにしてる?と心外だとでもいうように口を尖らせる。食べ終わったお弁当箱を片付けながら「でも、」と続けて口を開いた。
「どんな人であってもナマエにとって大切な人で、みんなと変わらないカップルでしょ?」
きょとん、と音がした。彼女以外の3人同様の顔をしていたと思う。この4人の中で一番ぼんやりとしている彼女は、実は誰よりも思慮深いのかもしれない。
一緒に驚いていた2人も「そうだよね」と賛同して、そこからは今まで聞けなかった分根掘り葉掘り聞かれる始末。これまで話したことがあまりなかった分、どうしても気恥ずかしさがあったが、不思議と嫌な気持ちはなかった。
竜胆と早く仲直りをしないとなぁと思った矢先、事件が起きた。
ヴヴッと携帯が震えたと思ったら、別のクラスの男子からのメールを受信したことを知らされた。彼とは以前友人を含めて何度か話したことがある程度で、メールもたまにする程度の仲だった。
『放課後時間ある?』
そんな男子からのメールだった。
放課後例の男子に呼び出された場所は図書館だった。ガラガラとドアを開けると、そこには既に呼び出した子がいて、小さく手を上げた。
図書館に入室すると、丁度司書の先生は外出していた。
呼び出されたからには何か話があるのかと思ったが一向に口を開く様子がない。
「どうしたの?」
「あー…、帰りながらでいい?」
「あ、うん」
呼び出して帰りながらとは?まぁ早く帰れるならいいかなと下駄箱に向かう。そのまま無言で靴を履き替え、無言のまま正門へと歩き出してしまう。
これは家に帰るまでに話が終わるのか…?
あまりに何も話さないので不安になっていると、男子がぴたりと足を止めてしまった。正門を目前に止まってしまった彼の足を見つめていると、僅かに震えている気がする。
「え、どうしたの?本当に大丈夫?」
流石に心配になって声をかけると、バッと勢いよく顔を上げた。
「あ、あの!!」
「はい!」
風が起きそうな勢いの発声に元気よく挨拶を返してしまう。
一瞬の間。
「あの、これ……」
おずおずと彼が鞄から取り出したのはカラフルな棒携帯。今私が一番頭を悩ませているウィルコムだった。
「え、コム……?」
「……俺と、付き合ってくださいっ!」
一瞬時が止まった。
コムを差し出して交際の申し込みは新しくないか…?
それに、私が欲しいコムは彼からのではなく、竜胆とのコムなのだ。彼では意味がないのに。
そこではたと気づいた。
あぁ、多分私はコムが欲しいわけじゃなくて、竜胆との繋がりが欲しかったんだ。繋がれるならなんだってよかった。誰にも話せなかった彼と私の繋がりは酷く不確実なもので、私が彼と付き合っているという証明なんて周りは誰もしてくれなくて、ただ私が信じているしかなかった。それがどうしようもなく不安で、せめて物的証拠のような何かが欲しかったんだと思う。繋がりが目で見えれば楽だから。やっすい、目に見える束縛や親密性が欲しかったのだ。
結局私は彼じゃないとだめなんだ。
申し訳ないけど断ろうと口を開いた瞬間、低い声が聞こえた。
「おい、浮気か?」
「え、竜胆?」
なぜここに?本当にいつも突然に現れるなこの男は。
いつからいたのか、ゆったりと正門の塀に身体を預けている竜胆の表情は50メートル離れていてもわかるほどに険しい。ゆっくり近づいて来る竜胆の表情もやっぱり険しかった。
「お前はコム渡してくれるなら誰でもいいのかよ」
「ちが……!」
否定しようとすると、目の前に手を出される。
「え、なに……?」
「携帯。出せ」
意味がわからないが、取り敢えず竜胆が不機嫌過ぎるので、言われるがままにカーディガンのポケットに突っ込んだ携帯を手渡す。私の手からそれを抜き取った竜胆は流れるようにパカリと開いた。次の瞬間バキンッという音と共にへし折られる。所謂逆パカだ。
「……は?」
あまりに突然の出来事すぎて理解が追いつかない脳みそ。
因みに先ほどから一言も発していないが、コムを持った男子も口が開いたままになっている。
折った当の本人は至って冷静な顔をしていて、なんならさっきより不機嫌さが和らいでいる。人の携帯を逆パカしてストレス発散するのはやめてもらってもいいですかね?
「コイツ俺の女だから」
くんっと引っ張られた腕に体勢を崩し、そのまま竜胆の胸に収まる。
金髪に水色メッシュの不良に凄まれて平気でいれる一般人なんているはずもなく、先程までとは違う意味で震えている脚を懸命に動かし、男の子は去っていった。
不憫な男の子を黙って見送り、我にかえる。
「いや、人の携帯逆パカすんのは本当にない。ありえない」
いかに私が竜胆を好きであろうと、嫌われたくなかろうと、携帯を壊されて黙っていられる人間ではないのだ。
成長と共に目元にあった丸い眼鏡はいつの間にやら無くなって、随分とはっきり見えるようになった綺麗なタレ目の双眸をじとりと睨む。さすがにその視線に罪悪感を感じたのか、若干の気まづさを滲ませてするりと視線を逸された。
「りんど…」
「ん」
目を逸らした竜胆のかおを覗き込もうとすれば、竜胆の視線は私の顔より下に落ちていた。その視線の先を辿れば、1台の白い携帯。それは先ほど竜胆が折った私の携帯とは別物で、だからといって私の知ってる竜胆の携帯でもない。
「……携帯機種変したの?」
「ちげェ。……ナマエのだよ」
尖らせた口先からもにょりと呟かれる。
私の?
意味がわからず、それでも差し出されるから受け取ると、幾分か満足そうに竜胆の表情が緩んだ。
「やる」
「は!?携帯を!?」
「コムも調べたけどよくわかんなかったんだよ…何台も携帯持つのメンドクセーし」
なぜか少し拗ねたようにぶつぶつと文句と言い訳を紡ぐ竜胆が小さい子のようでちょっと可愛いと思ってしまった。
「だからって携帯折らなくてもいいじゃん」
さすがに折られたことは腹が立つので文句を言う。と、予想外な答えが返ってくる。
「……お前があいつと連絡取ってる携帯だと思ったら腹立った」
「……ん、え?嫉妬?」
普段そんな姿を見せない竜胆のまさかの理由に驚き再度顔を覗き込むと、心なしか少し赤い顔を隠し小さい声で「悪いかよ」なんて呟くものだから、私中の竜胆可愛いゲージが振り切れた。
「悪くない!嬉しいよ。友達の連絡先聞き直すの大変だけど……」
竜胆をぎゅうぎゅうと抱き締めながら、データが空であろう携帯を思う。
「あー、お前の仲良いやつらの連絡先は入れといた」
とんでもない爆弾発言。一体いつどこでその友人たちの連絡先を手に入れたのか。聞くのは怖いが気になるところである。
携帯を開き電話帳を見ると、確かに仲良い子たちの連絡先、家族の連絡先は過不足なく入っていた。
いや本当に恐ろしいな。
携帯を見つめてぼんやりと考えていると、竜胆が口を開いた。
「それ、俺との電話だけタダだから」
「え?」
「携帯代の請求も全部俺んとこ来るようになってるから別に普通のでもよかったけど、お前変な気使うだろ」
つまり、竜胆とはどれだけ電話しても料金は変わらない、ということだ。
「なんもなくても電話してこい。喧嘩中とかは出れねぇかもだけど、終わったらかけ直すし」
俺だって電話したいから。
そう続けた竜胆に、ただ自然と頬に涙が伝った。
「繋がりが欲しいのがお前だけだと思うなよ」
そう言って優しく抱きしめられたと思ったら、途端に首がひやりと冷えた。驚いて竜胆から僅かに離れて首元を確認すれば、ユニセックスモチーフのネックレスが下がっている。
顔を上げて竜胆を見れば、竜胆が自分の首元をいじり一回り大きい同じモチーフのついたネックレスを見せた。
「ナマエ、こういうの好きだろ」
ちょっと悪戯に笑う竜胆に一生勝てる気がしない。
嬉しいやら恥ずかしいやら色んな気持ちでぐちゃぐちゃになったまま、また竜胆に抱きついた。
暗くなる前に帰んぞ、と言われてやっとふたり帰路に着く。どうにも気恥ずかしいままに、自分の手と自分のものよりもひと回り大きく骨張り硬くなった手が、橙の陽に照らされ揺れる様を緩む頬で見ていた。
その日の夜、家族から「ナマエさんとお付き合いさせていただいてますって丁寧に挨拶に来てくれた」と竜胆の訪問を知らされ、その際に連絡先を聞かれたと報告を受けた。次の日友人には「ナマエの携帯が変わるまでは言わないでくれって頼まれてたんだよね」と、これまた同じく竜胆が改めて挨拶に行った旨とその際に連絡先を聞かれたという話を聞いた。
私はどうやら自分で思っているよりも愛されていたのかと気づいて、もらった携帯で初めて奔走してくれた彼氏に電話をした。
『……遅えよ』
第一声にうけた文句にはそれでもじんわりと喜びが滲んでいた。
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