私は今一枚の紙を持って体育館へ向かっている。何故かというとただ単に先生にパシられたからなんだけども。何となーく直ぐには帰る気になれなくて教室で机にぐでーっとしていたのが運の尽きだ。たまたま教室に入ってきた先生に捕まった。何がいやー、今日本当は花宮君に渡すつもりだったんだけどすっかり忘れてしまってね!ちょっと先生まだやる事があって手が離せないから、悪いけど体育館に持って行ってくれないかな?だ。何故私がと当然思ったけど、聞いた限りだとバスケ部の備品在庫やらスケジュールやら。まぁないと困るものではあるんだろうなと思ったので、友達(笑)の好みとして引き受けた次第である。

「すいまーせん、花宮君いますか?」
「ん?あぁ、何だ名前か」

体育館は基本的に締め切られている。何故かって花宮君曰く「キーキーうるせぇ猿が集まってくる」だそうだ。辛辣。まぁ彼らのスタイル的に練習風景をずっと見られているのもやり辛いだろう。気まずいなぁと思いながらも体育館の扉を開ければ、たまたま近くにいた瀬戸君が直ぐに気付いてくれた。

「あ、瀬戸君お疲れ様」
「うん、花宮ならあっち」

うんってなに、ちょっと可愛い。なんて思いながら指差す方を見れば既に私に気がついた花宮君が歩み寄って来ていた。

「どうした」
「これ、先生から。花宮君に渡してくれって」
「はぁ、やっとか。随分遅れたと思ったら持ってくるのも人任せかよ、アイツ」

悪いな、なんて花宮君から貴重な一言を聞けたのでまぁ良しとしましょう。要件も住んだことだし帰ろうかなと何気なく体育館を見回してふと誰かが足りない事に気が付いた。

「あれ、原君は?」
「まだ来てねぇ、校内で見かけなかったか?」
「うーん、どうだろう。先生に頼まれてからは脇目も振らずに来ちゃったから」
「そうか、まぁどうせサボりだろ」

花宮君は特徴的な眉を寄せ溜息を吐く。別に勝ちたいわけじゃないとか言ってるしラフプレーもするけどやっぱり何だかんだきっちり練習をする辺り根は真面目なんだなとつくづく思う。優等生キャラを完璧に全うする為な可能性もあるけど。口振りから原君が突然無断欠席をする事は初めてじゃないようだ。でも、やけに気になる。私のこういう予感は割と当たるから少し心配だ。当たらないに越したことはないんだけど。

「花宮君、私ちょっと嫌な予感がするから見てくるよ」
「……あぁ、悪いな」
「任せて!」

本日二度目の貴重な一言を頂き急いで体育館をでる。私の言う嫌な予感というものがどういった事なのか、花宮君は察しがついているのだろう。苦虫でも潰した様な顔をしていた。さて、どこに行ったか見当もつかないけど兎に角先ずは原君の教室へ行ってみるべきだろう。廊下を走らないの張り紙をフルシカトして教室へ急いだ。普段特別運動をしていないもので、教室に着いた時にはすっかり息が上がっていた。

「………ま…で……ぇ………」

軽く息を整えて扉を開けようと手をかけると、中から声が聞こえた。何を話しているかまでは聞き取れないけど、正しく原君の声だという事は分かる。なんだ、誰かと話し込んでたのかとほっとしながら扉を開けば、窓際から二つ目の机に腰掛ける原君の姿があった。あー、やっぱそうだよね。

「原君」
「お?苗字じゃん!どうしたの?」
「花宮君が探してたよ」

正確には怒り気味で特別探しているわけではなかったけど、そのまま伝えるよりは部活へ向かってくれるだろうと思い脚色した。

「まじで?呼びに来てくれてわざわざありがとねん」
「うん、大丈夫。…ねぇ原君」
「んー?」
「何、してたの?」

机から腰を下ろし机の間を縫ってくる原君。一度きょとんとした顔をした後、何か妙に気の合う奴がいてさ、ずっと話してた!結構話してたのに何話してたかは覚えてねぇんだけどなんてケラケラと笑っている。窓越しに話していたから上履きが見れなくて学年も分かんないんだけどねーと言い残し教室を出て行った。やっぱりかと思わず溜息が漏れる。

「苗字ー、行かないの?」
「あ、うん、今行く!」

誰もいなくなった教室を一瞥し教室の扉を閉めた。ご丁寧にも少し離れたところで原君が立ち止まって待っていてくれたので急いで駆け出す。原君は決して霊感が強いわけではない。ただ、時々たまに、波長が合ってしまう所謂電波タイプだ。いつ何処で合致してしまうか分からない分少し厄介。

ねぇ原君、君気付いてる?
ここ、3階なんだよ?

((山崎君もだけど、原君も大概だな))
(お待たせー!)
(着替えたらとりあえず外周5周してこい)
(えー!?)