「ねぇナナバ」

「何だい?」

「ナナバの好きなタイプってどんな人?」


久しぶりに被った休暇の昼下がり。ベッドに寝転がり本をぺらぺらと捲りながら名前がぽつりと言った。ちなみにここは私の部屋だ、そして私のベッドだ。もう少し警戒してほしい、私だって男なのに。話がずれた、今名前は何て言った?好きなタイプ?今まで色恋沙汰の話なんて一切してこなかった名前が好きなタイプ?好きな奴が出来たの?いつ?どこで?どのタイミング?変な虫がつかないように入団当初からずっと見守ってきたのにとんだ横槍をいれられたもんだ。柄にもなく動揺してしまい直ぐに返事が出来ずにいると、ナナバ?と名前がこっちを振り返った。


「え、あぁ、ごめん。何だっけ?」

「だから、ナナバの好きなタイプ」


普段ならば、ちゃんと聞いててよ!ってむくれるところなのに名前ときたら伏せ目がちに再び同じ事を繰り返した。本気、なの?私が好きなのは名前なのだからタイプを伝えたら気付いてくれるかな?……いや、名前のことだ、伝えたところで気付かず、ふーんそうなんだで終わってしまいそうだ。ならばどうする、どうする私。いまだこちらを見ながら返事を待っている名前を見つめ返す。少なからず休暇に、私の部屋のしかもベッドにごろごろするくらいだ、嫌われてはいないはず。ならば勝負にでるしかない。


「私が好きなのは名前だよ」

「……え?」

「私が好きなのは、名前」


内心心臓が破裂しそうな程緊張しながらもどうにが自分を落ち着かせて言った。ぱちぱちと数回瞬きをしたかと思うと、漸く私の言葉の意味を理解したのか顔を真っ赤にさせながら名前は顔を逸らした。あれ?何か予想と違うリアクション。これはもしかしたら押せば可能性はゼロじゃないんじゃないか?


「じょ、冗談はいいから!」

「冗談じゃない、昔からずっと好きだった。私じゃ駄目?」


顔を真っ赤にしながら困ったような焦ったような顔でこちらを見る名前の手を握り締める。そのまま見つめているととうとう名前は顔を俯かせた。けどそれは赤い顔を隠す為だと分かる、だってまだ耳まで赤い。


「…わ、たし…も」

「え?」


顔を俯かせたまま名前が聞き取れないくらい小さな声で何か言った。よく聞こえず反射的に聞き返すと、意を決したように顔を上げた、やっぱり顔はまだ赤い。


「わ、私も!ナナバが、好き…なの」

「…本当に?」

「ナナバの浮いた話聞いたことない、から」


さり気なく聞いて少しでもナナバの好みに近づこうとしたの。声は段々小さくなっていって最後の方は聞き取れるか否かな程小声だった。あぁ可愛い、私は昔から今の今まで名前しか見ていないのにどうして分からないんだろう。私が部屋に招き入れてる女性なんて名前だけなのに。思わず名前を抱きしめるときゃああああ!と悲鳴をあげた。そんなリアクションも可愛いと思っちゃうなんて私病気かな?


「あ、あの、あのあの!」

「どうしたの?」

「ほ、んとうに、私のこと、好き?」


本人は気付いていないのかもしれないけど、顔を赤らめ瞳を潤ませながら不安げな眼差しでこちらを見上げる名前は視覚的にいけない。ふしだらな気持ちになってしまう。


「当たり前でしょ、名前こそ、もう離さないけどいいの?」

「…ずっと離さないで」


ずっきゅーん。正にずっきゅーん、という効果音があっている。大きく深呼吸した後に私の胸に顔を擦り付けるようにしながらそう言う名前に心臓を撃ち抜かれた。その仕草にその台詞はずるい結婚しよう、いや結婚する、絶対に。とりあえず今は漸く叶ったこの恋を大切に育んでいこう。