ぐーっと青くすんだ空に向かって伸びをする。
どんちゃん騒ぎで所々奇声すら上がるこの交流祭も、今年で何度目だろう。毎年毎年参加している生徒の面々は少しずつ変わっていくのに、その雰囲気だけは百年以上変わらなかった。
と言っても毎年出店する店も、積極的に活動する生徒も変わっている。もはや記憶が薄れるほど幾人もの生徒が楽しそうに闊歩する姿は毎年見ていて微笑ましくなる。
自分もそのうちの一人に見えるのだろう。事実、僕は今清々しい気分で人ごみの中を颯爽と歩いている。
人ごみの波に逆らえず、渋々参加した修練棟十時の部がようやく終わり、シフトも特にないこの時間、遊び放題だった。
出店の並ぶ道を歩いていく。おいしそうな匂いが漂い、遊べる出見せでは歓声が上がる。
ふと、見覚えのあるふわふわした髪が見えた。あとあと僕も手伝いをする予定の、女子力向上部が出店しているクレープ屋『Petit Sucre』の前で彼女はクレープを選んでいた。
「ルイディナ?」
後ろから声をかけると耳がピン、と立つ。くるっと振り返った彼女の顔がパァっと笑顔になった。
「茉紘くん!」
今日はしまっているのであろう尻尾がブンブンと振られている様を想像できた。クロー五年、同じクラスのルイディナは犬の獣人だ。そもそも犬というだけで感情がわかりやすいのだが、だいたい顔にすぐ出るタイプの子なのでもっとわかりやすい。
いつもは遊んで遊んで〜、といろんな生徒と一緒にいるのを見るが今は一人のようだ。
「一人なの珍しいね」
「うん、ちょっと前までは遊んでもらってたんだけどみんな忙しいみたいで」
そう言いながらキラキラこちらを見つめてくるルイディナの目には遊んで、と書かれている。ちょうどいい、この賑やかな空間を一人で巡るのは少し寂しかったのだ。
「じゃあ一緒に回ろ。僕も後で仕事あるけど」
「ほんと!? やった、ありがとう〜!」
ふにゃりと笑顔に変わるルイディナの表情がなんとも可愛らしい。可愛いものを見ていると思わずその頭を撫でたくなるものだ。
「やっほ、ドーラ。クレープ屋は盛況?」
女子力向上部のドーラが店頭で笑顔を振りまいていた。アッカとクローの色をベースにしたメイド服は非常に可愛らしい。ぶっちゃけ、僕もあの制服が着たいから手伝うのを決めたくらいだ。
「茉紘くん! うん、なかなかの売れ行きだよ〜! 茉紘くんも後でシフト入ってるよね」
「うん。今は普通にお客さんとして買う〜。ルイディナはどれにするか決めた?」
鼻をクンクンと動かしながら店頭に並ぶクレープを凝視しているルイディナは僕の声にもうーん、と唸ったまま黙り込んでしまった。
魅力的なのはわかる。見た目も味も研究に研究を重ねたおかげで最高のものだろう。中にはいびつな色をした魔物のクレープもあるが、僕は定番のチョコバナナを選んだ。
「はーい、茉紘くんどうぞ」
「ありがと〜」
差し出されたクレープを受け取る。包み紙越しに柔らかな生地の感触と、できたての熱が伝わってきた。
「ルイディナ、まだ?」
「うう、どれもおいしそうで……」
「僕のもあげるから早く選びな。他のところも回ろうよ」
うんっ、と頷いたルイディナの耳がぺたん、とへたる。まぁ可愛いからいいか、とチョコバナナクレープに一つ、口をつけた。
茉紘の交流祭01 買い物
ルイディナちゃん(@kaisen_kikaku)と!