まばゆい光となれ

072:眩




 人でごった返す修練棟のなか、戦闘に一区切りつけ周囲を見渡していた。広範囲に攻撃を繰り出せる魔法を持ち合わせていないせいで助っ人かタイマンでしかここでは活躍できない。その代わり、背後からの奇襲ならなんども成功させている。次の獲物を探すように、視線を巡らせた。
 ふと目の端に見知った髪型が映った。……ミケ? なぜこのイベントに。あまり戦うのは好きではなかったはずなのに……。
 どうやら今の所誰かと戦っている様子はないようだ。頭のおかしい奴らも集合しているこの空間で一人なんて危険すぎる。すぐ退去させないと……!
 その時、一人のアッカ生が動いた。ただ立っているだけのミケは狙いやすいと思ったのだろう。ポイント稼ぎのために多少の怪我を負わせられるかもしれない。ミケまで一直線にかけてくる。
「ミケ!」
 叫んだ俺の声がミケに届くのと、俺の腕がミケをかばい鉄パイプがバルディッシュの切っ先を受け止めるのはほぼ同時だった。
「く……くおりん?」
「何してるんですか? 後ろにいるのはクロー生ですよ」
 ターヴィが理解できない、という顔に変わる。片腕の力でバルディッシュとターヴィの腕力を防ぐのはだいぶ骨が折れた。隙をついて一度弾き、間をとる。
「悪いな、こいつはダメだ。殴りてぇなら他のやつ当たれよ」
「……どうしても、と言ったら?」
「俺が相手になる」
 どれほどの時間か、バルディッシュの切っ先の動きとターヴィの指先を凝視していた。少しでも動けば殴りかかる用意はできている。向こうも同じようだ。ミケがようやく驚きから解放されたのか、俺の制服をキュ、と引っ張った。
「……わかりました。手は出しません。でもここにいればいずれ攻撃はされますよ。毎回守るつもりですか?」
 俺の答えはまたず、ターヴィはさっさと次の獲物めがけて走っていった。気づかないうちに全身に入っていた力がふっと抜け、構えていた鉄パイプを床につける。
「くおりん、どうしたのぉ」
「お前なぁ……。なんで前線にいるんだよ。参加するのはいいけど、せめて後衛で応援か支援でもしとけ」
 ミケの頭をくしゃっと撫でる。今の所周りからの攻撃はないが、そうこうしているうちにもすぐ隣ではアッカとクローの殴り合いが始まっていた。
 ターヴィの言う通りだ。まがりなりにも俺はアッカでミケはクロー。俺がずっとミケについて守ってやることもできないが、ミケに何かあったらと思うと気が気ではない。伝えたところでミケは大丈夫だよぉ、と笑うのだろうが。
「えへへ、ちょっとくおりん探しに来てたぁ」
「アホか。一応敵だぞ」
「うん、でも……くおりんが戦ってるの、見たかったから」
 そういって笑う顔を邪険にはできなかった。ため息をついて周囲の知り合いのクロー生を探す。ミケを預けて、早々に俺も前線へ戻ろう。
 少し申し訳なさそうにしているミケの頬を両手で包み、こちらを向かせる。
「できるだけ見えるように戦ってやるから、目離すなよ」



クオミケ交流祭その3 スタンプラリー:修練棟
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