幽霊探し

081:幽



 いつになくざわつく生徒の波を抜けて、最後のスタンプ、魔法学の教師を探していた。
「ねえ、知ってる?噂」
「あ、七不思議でしょ! 既に音楽室のやつは出てたらしいよ」
 七不思議? すれ違いざま聞こえてきた話し声に首を傾げる。同様に耳に入ったのか、ミケが口を開いた。
「学園の七不思議でしょー? ミケ、知ってるよぉ」
「なんだそれ」
「みゃこが教えてくれたのぉ」
 笑い飛ばす俺には構わず、ミケはその内容を語った。
 例えば図書室。薬草学を受けていた生徒が種を挟んだまま返却した本がある。生徒のいない間を見計らって種が"羽を伸ばしている"らしい、だとか。
 例えば螺旋階段。不思議な魔力が働いて過去と未来の自分に会える、だとか。
 例えば設備が古い場所に増える傷、だとか、例えばどこからともなく現れる扉とか。
 他にもいろいろと教えられたが、どれも眉唾ものだ。適当な相槌を打っているのがミケに伝わったのか、六つ目まで話すと一度黙ってしまった。
「なぁ、最後のは?」
 よくぞ聞いてくれました、と言わんばかりのドヤ顔をしたミケが俺の前に回り込む。進行方向を塞がれ立ち止まった俺の顔に近づくミケの顔。
「六つ全部目撃したら幸せになる!」
 んなわけあるか、とは目の前のキラキラした目をするミケには言えなかった。取り繕うようになるほど、と頷く。おおよそ、作られた話にしてはなかなかだ。
「でもさすがに、黄昏なんかは無理じゃねーか?」
「七不思議に絞って探さないと無理だねぇ」
 笑う黄昏、と言っただろうか。ある教室にいると空が赤くなり時間があっという間に経ってしまうというものだ。信じてはいないが、実際にそんなことがあれば交流祭がすぐに終わってしまう。
 ただ、気になるものならある。音楽室、幽霊の婚礼だ。幽霊なんていないとは思うが、もし幽霊が結婚式をしてるなら見てみたい。
「まぁ七不思議なんて探さなくても幸せになれんだろ。……気になるってんなら今から行くか?」
 交流祭で賑わう校舎外ではある程度回ったものの、最後の魔法学教師は見つけられなかった。残っているとすれば修練棟か、校舎内。イベントの行われている修練棟は可能性が低いだろう。必然的に校舎内を探さなくてはならない。
「いいの!?」
「ああ。ただし行き先は俺が選ぶ。いいか?」
「全然いいよぉ!」
 つないだ手がブンブンと振られて体がよろける。嬉しそうなミケは見ていて楽しい。
 喧騒から逃れるように校舎の中に足を踏み入れる。普段の生活からは考えられないほど静かな校舎内は、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。



くおみけ交流祭その6 スタンプラリー:教師捜索
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