甘い匂い、香ばしい匂いが立ち並ぶ出店の間を練り歩く。左腕の腕章は揺るがなくそこにあった。
巡回がてら出店を巡ってもいいと言われてはいるが、食べ物ばかりの店はあまり魅力的には映らない。匂いがいいと言うことは分かれど、私には味がわからないのだ。
問題を起こしそうな生徒は注意深く観察していると、目の端にキラキラした何かが映った。ふらふらと惹かれるように寄っていく。『BLUE JEWEL』の看板が目に入った。どうやら宝石アクセサリーを販売しているようだ。値段もそこまで高くない。バイト代も今日の日のために貯めておいたから余裕がある。
「あれ、アルミリア?」
人がいるとは思っていたが、横から見知った声がかかった。パッと顔を上げるとそこにはよく見知った顔。
「……デラシネ」
「久しぶりだね」
同じ学園にいるはずが、なかなか会うことのない友人デラシネがそこにいた。だいぶ久しぶりに会った友人の姿があっさり目の前に現れて驚いた。
「本当に。交流祭には来ていたんですね」
「こういうお祭りは嫌いじゃないからね。君こそ、結構満喫してるみたいだけど」
「こういう催しは好きですから」
視線を宝石に戻す。綺麗な青に光るブローチや、少し青みがかったパールは陽の光を反射してキラキラ輝いていた。
「欲しいのかい?」
「……いえ、綺麗だなと思っていただけです」
「買ってあげようか」
「そんな、結構です。お金ならあります」
慌てて目の前で手を横に振る。デラシネは少し可笑しそうに笑った。
「今日は交流祭だから、無礼講だと思ってよ」
「でも……」
宝石の市場価格と比べれば安いとはいえ、交流祭の出店で並べるには高額すぎる宝石のアクセサリーを買ってもらうのは忍びない。かといって、先輩の厚意を拒むのも失礼に値するのだろう。こういうとき、普通の人間や生き物なら安い食べ物を奢ってもらうのが筋だというのに私は……。
「そんなに悩まなくていいよ。ほら」
悩んでいるうちにもう会計を済ませていたのか、彼の手の中にブローチが包まれていた。申し訳ないと思いながらも素直に受け取った。
「申し訳ありませ……いえ、ありがとうございます」
私には勿体なさすぎる輝きを持ったそれをそっと包みから取り出した。あとで制服につけてみよう。
「普段僕の話を聞いてくれてるお礼。これからも宜しく、アルミリア」
「ええ、こちらこそ。よろしくおねがいいたします」
きっと彼には見えていないだろうが、マスク下の口がほのかに笑むのがわかった。
アルミリアの交流祭01 スタンプラリー:買い物
デラシネさん(@jJSQNOnDxELEzOK)