待つ時の光

003:光




 木の幹に背中を預けて、目の前を行き来する生徒たちを眺めていた。交流祭当日。あらかじめ約束していた待ち合わせ場所、星のなる木の前に俺はいた。薬草学と魔法工学の生徒が共同制作した、小さな宇宙が実った木は他の生徒たちにも待ち合わせ場所として用いられているようだ。
 暇なので木を眺めていた。約束の時間より少し早く着いてしまったが、時折流れ星が動いたり、宇宙の中で星が生成されているこの木は見ていて飽きない。
 どこか落ち着かない気分はここに着いてからずっと継続していた。理由は割と明白だ。普段着ないような服を着ているからだろう。赤を基調にしたミケセレクトの洋服のセンスはいい。赤と白のストライプシャツに、赤のワイドパンツと同色のベルト。同じく赤のカーディガンを羽織っている。が、普段から制服以外着ない俺にとってはなんとも居心地の悪さを感じてしまうのだ。もちろん、交流祭に参加するのが初めてだからというのもあるけれど。
 早く来ないかな、と伸びをした時。上から何かが落ちてきた。反射的に掴むとそれは先ほどから度々きらめいている流れ星。ああ、そういえば。
「くおりん! 待った?」
「全然」
 手のひらに浮かぶそれを握ってこちらへ駆けてきたミケを迎える。俺とは対照的に、ミケはモノクロツートーンで全身をまとめている。首回りにファーのついた黒のトップスをモノクロチェックのハイウエストスカートにインしている。髪型はいつも通りだが、そこには俺の服と同じ色のベレー帽が乗っていた。
「これやるよ」
 先ほど落ちてきた流れ星をミケに差し出す。それは少しいびつな星型をしていたが、不思議と発光をやめなかった。
「なぁに、これ?」
「今この木から落ちてきた。噂によるとお守りになるらしいぜ」
「じゃあくおりんが持ってた方がよくない?」
「んー……これが落ちたらお前がきたから、願掛けみたいなもん」
 ほれ、とミケの手に握らせる。ミケはちょっと悩んだ後、嬉しそうにありがとう、と笑った。
「ねね、あそこのコーヒー買っていこうよぉ」
 ミケが俺の腕を取り、出店を指差す。泥水のようなコーヒー、の文字を見つけちょっと不安にはなったがまぁ大丈夫だろう。
 年に一度の交流祭に浮かれた雑踏の中に足を踏み入れる。自然と足が軽くなっていた。楽しくなりそうだ、と隣でウキウキしているミケを盗み見た。



クオミケ交流祭01
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