愛しさを知らない

044:愛




「くおりんくおりん、これ続きやろうよぉ」
 中庭にずらりと並んだ出店を一通り回り終え、手持ち無沙汰になったところでミケが紙切れを差し出した。それは交流祭前、全校生徒に配られているスタンプラリー用紙だった。俺もミケに念を押され、一応持ってきていた。無造作にポケットに入れられくしゃくしゃになったそれを取り出す。
「別にいいけど、これ手がかり適当すぎねぇか」
「とりあえず商業棟行ってみよぉ! 交流祭だからセールとかしてるかも!」
「ん、わかった」
 やけに楽しそうにはしゃぐミケに腕を引かれ、ついていく。ミケが探そうとしている次のスタンプは商業棟にいる教師を探すというものだ。誰がいるのかはわからない中であの中を探せとはなかなかに鬼畜ではないだろうか。
「先生探すついでに、くおりんの洋服もまたみてく!?」
「俺の服よりお前の服見ろよ。あの店とか、お前がいつも行ってる店だろ?」
 指を指した先には俺もよく連れて行かれたミケの行きつけの店がある。キラキラと目を輝かせ、交流祭限定セールを行っている店の中へ飛び込んで行った。その後ろ姿を見てかわいいな、と思わず笑う。
 シュヴァリエがよく、女の子らしさを磨けと言っていたのを思い出す。女の子らしさというのはああいうのを言うのだろう。俺にはないものだ。ただ、だからこそあの子から目を離せないのだ。
「あ、せんせー!」
「っわ、」
 店の外から中ではしゃぐミケの姿を眺めていた、そのとき。背後をかけていく生徒にぶつかりつんのめりそうになる。文句の一つでも言ってやろうと顔を上げると、生徒に囲まれる教師の姿があった。魔法学(I)のフリーレンだ。騒がしく生徒たちを迎え入れると懐からスタンプを取り出した。あいつか。
「ミケ----」
 見つけたぞ、と呼ぼうとして、服を見つめる楽しそうな横顔が目に入る。まぁいいか。この辺にはいるだろうし後ででも見つかるだろう。今は少しでも長く、楽しそうなあの子の顔を見ていたい、かもしれない。
 一歩店の中に足を踏み入れる。熱中するミケに気づかれないよう、そっと近づいた。
「ミケ」
「ひゃ!? びっくりしたぁ……くおりんかぁ」
 体ごと飛び上がるのではないかと思うほど肩をビクつかせたミケが俺を見てほっと安心したような顔をする。してやったり、と笑いが漏れた。
「おう。なんかいいの見つかったか?」
 えっとねー、と何着か手にとってみせるミケを横目に、穏やかな交流祭の昼間は過ぎていく。



クオミケ交流祭その2 スタンプラリー:楽しむ
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