困惑した様子の、恐らく真田くんの後から、ぞろぞろと男の子達が病室に入ってくる。
入りがけに皆が皆私を見て一瞬動きを止めるのがなんとも言えない。
微妙な空気の中、最後に入ってきた黒髪もじゃもじゃ頭の少年が、私を視界に入れてえっと声を上げた。


「…すまない精市、邪魔をしたか?」


ドアが閉まったのを確認して、糸目の男の子が精市に言う。


「勘違いしているようだから先に言っておく。彼女は友人だよ」


精市の言葉に、なんだぁ、やら、へぇ、やら、安心と納得の混ざった声が彼らから聞こえて、私は慌てて頭を下げた。
心なしか精市の口調も、朗らかさは残しつつも少しキリッとした音色に変わっていて、あぁなるほどこれは部長だ、と内心納得した。
端の方にいた銀髪の男の子がどさりと空いていた椅子に座り、椅子が小さく音を立てる。


「名前、とりあえず座って」
「あ、ありがとう…」


銀髪さん以外が立っている中申し訳なさもあったが、お言葉に甘えることにして再度椅子に浅く腰掛けた。
精市は私に、紹介するね、と言い、


「察してるとは思うけど、うちの部員達だよ」
「あっ、はい、」


そうですよね、真田という名前を聞いてそんな気はしてました。
もう一度ぺこと頭を下げれば、精市は次に彼らの方を向き、


「彼女は苗字名前さん。勿論、皆知ってるよね?」


と微笑みを見せた。
がたっと音が鳴り、見れば先程座った銀髪さんが驚いた顔で私を見つめている。
その音に続くように、はぁ!?と、今度は赤髪の男の子が私と精市を交互に見た。


「え、じょ、冗談だろぃ?幸村くん…」
「冗談じゃないよ。俺が嘘をつくとでも?」
「い、いやっ…!え、嘘、マジ…!?」


赤髪さんにじっと見つめられ、はは、と取り繕ったような笑みが漏れる。


「えっと…ご紹介にあずかりました、苗字名前です」


ぽかんとこちらを見つめる赤髪さんの周りでも、彼らは揃って同じような顔をして私を見ていて。


「…せ、精市…」
「全く…驚くのは分かるけど、自己紹介くらいしたらどう?」


その言葉に早くも反応した赤髪さんは、そわそわした様子で真っ先にこちらに駆け寄ってきて、


「丸井ブン太です!!あ、握手してもらってもいいですか!?」
「へぇ!?」


勢いに押されるまま差し出された手に触れれば、ぎゅっと掴まれてぶんぶんと振られた。


「俺めっちゃファンで…!!やべぇ、すげぇ嬉しい!!」
「あ、ありがとうございます…」


い、勢いが凄い…


「丸井、いつまでやってるつもり?次がいるんだけど?」
「うっ」


渋々手を離した丸井くんは、ちらちらと私の様子を伺いながらも一歩後ろに下がった。
丸井くんと言えば、精市のメッセージに書いてあったのは、お見舞いにいつもケーキを持ってきてくれる子。
彼が下がった方にある椅子の上にある白い箱は、恐らく今回も彼が持ってきたケーキなのだろう。

続いて私の前に立ったのは、最初に言葉を発した糸目の男の子。
でかい。


「柳蓮二です。自分も、貴女のことは良く雑誌で見させて貰っていました。会えて光栄です」


前が前だったからか、ただ微笑を浮かべた彼に、大人だ…と感動する。
柳くんはとても頭が良く、いつも冷静に物事を判断する人だと聞いていた。
まさにその通りである。

柳くんと入れ替わるように私の前へ出たのは、これまた頭の良さそうな薄茶髪の眼鏡の男の子だ。


「初めまして、柳生比呂士と申します。私も、お会いできて光栄です」


おぉ…2連続大人…
柳生くんも柳くんと同じく頭が良く、よく仁王という人に振り回されているのだと聞いてはいるが…仁王くんはここに居るのだろうか。
なんて考えていれば、柳生さんの肩口からひょこりと顔を出したのは先程椅子に座っていた銀髪さん。


「仁王雅治。まさか、"傀儡師"が幸村のオトモダチだとは思っとらんかったぜよ」


わー…ほんとにがっつり知られてるんだな…
この人が仁王くんだったのか。
精市から不思議な喋り方だと聞いてはいたけど、思ったより独特な喋り方をする人だ。


「黙っとったなんて酷いのぅ、幸村」
「ホントだよな!?教えてくれたってよかったじゃんか…!」
「それはまた後で説明するよ。ほら、あとの3人も。自己紹介」


精市の言葉に押されるように、真田くんと思われる人が柳生くん達と入れ替わるように私の前に立った。
これまた、でかい。


「立海大附属中2年、真田弦一郎です」


武士のような綺麗なお辞儀に、こちらまで自然と背筋が伸びてしまう。
真田くんと言えば、やっぱり思い起こすのは赤也くんのこと。
残る2人…浅黒い肌のスキンヘッドの男の子と、もふもふした黒髪の男の子、のどちらかが赤也くんなのだろうか。
と、続いて前に出たのはスキンヘッドの男の子。


「初めまして、ジャッカル桑原です。…あー、…よろしく?」


ジャッカルくん…!
精市から聞いていた、一人だけ日本のものではないその名前は確かに私の頭の中にしっかりと残っていた。
仁王くんに振り回される柳生くんとは別に、主に丸井くんから振り回されている彼は、部内一の苦労人かもしれないと精市が言っていた。

ということは……と、残った黒髪の男の子へ視線を移せば、彼は慌てたように前に出て、人懐こそうな笑顔を浮かべた。


「立海大付属中テニス部のエース、切原赤也ッス!」


どの口が言ってんだよ、と丸井くんにぽこりと頭を叩かれ、いずれはなるんだからいいじゃないッスか〜とヘラヘラ笑う赤也くんに、精市が調子に乗るからと言っていた理由が分かった気がした。


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