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立海メンバーの自己紹介も終わったところで、改めて私もしっかり自己紹介をしておこうと思ったのだが。
それより先に、私の前に立ったままだった赤也くんがこちらを身を乗り出した。
「アンタのことは先輩達から聞いてます!めちゃくちゃつえーんでしょ?良かったら俺と」
「赤也!」
「うっ、な、なんスか副部長ぉ…!」
「彼女に失礼だろうが!遠慮というものを覚えんか!」
「初対面の女性の方への口の利き方も、感心しませんね」
「そうだぞお前!なんなら俺の方が苗字さんと…!」
わちゃわちゃと騒ぎ出した彼らに空いた口が塞がらない。
はぁ、という精市のため息と、だから会わせたくなかったんだ…という呟きが聞こえた。
「うるさい。静かにしないか。ここは病院だよ」
儚くも良く通る精市の声に、騒がしかった室内は一気に静まりを見せた。
第一印象大人組が精市と、主に私に対して、申し訳ない、すみません、と僅かに頭を下げる。
なんだか面白くなって、ふふ、と笑いが漏れた。
「いえ、皆さんのことは精市から良く聞いてます。良いチームですね」
「き、聞いて、って…?」
「…精市、いつの間に俺達のことを話していたのか」
「話せば長くなるんだけど…」
とりあえず、と赤也くんと丸井くんの名前を呼んだ精市は、
「残念だけど、部長として彼女との試合は許可出来ないよ」
「は!?」
「な、なんでですか…!?」
「彼女は、青学男子テニス部のマネージャーだからね」
今日一番の驚きが部屋を埋めた。
精市が私との出会いを、私の過去には触れずに彼らに話していく。
メッセージのやりとりのことを含め、一部始終を聞いた彼らはやはりなんとも言えない顔を浮かべていて、中でも丸井くんは椅子に深く腰掛けてまじかぁとため息をついていた。
「なーんで青学なんだよ…そこは普通、親と同じ学校じゃねぇの…?」
「彼女にも色々あるんだよ、察してくれないか」
「いいよ、精市」
それくらいなら、なんとなくだけど、精市の周りにいる彼らになら話せそうだと思って。
なるべく重々しくならないように気をつけよう。
「私の膝の故障については、ご存知でしょうか」
顔を見合せた彼らがぎこちなく頷いた。
知ってくれているなら、話が早くて助かるものだ。
「ちょっと自暴自棄になってしまいまして、中学進学と共に日本に帰ってきたんです。最初は立海に通うという話で進んでいたんですけど、親の影がちらつく立海は少し居づらいのもあって…無理言って青学の方に」
まあ色々あって結局マネージャーをやらせて貰ってるんですけど、と笑えば、青学か…と真田くんがぽつりと呟いた。
十中八九、国光のことを考えているのだろう。
まだ彼らが小学生の頃、とあるジュニア大会後の野良試合で真田くんは国光に負けたという話を精市から聞いた。
それから彼は国光に勝つことを目標の一つにしているらしい。
「なので、表向きは敵校同士なんですよね、残念ながら」
なるほど、と仁王くんが低く笑った。
「それを知った上で、幸村は苗字とオトモダチになったんじゃろう?」
「そうだよ。友達なら、敵校だろうが関係ないからね。お前達のことは名前に色々話してるし、名前も青学の部員のことは良く話してくれるけど、お互い今の部活内容に関することは一つも話してないし、問題は無いだろ?」
なら、と仁王くんが私の方へと歩いてきて、すっと片手を差し出した。
「俺ともなってくれんかの、オトモダチ」
驚く私に、俺も!!と丸井くんが慌てたように仁王くんの隣に立った。
赤也くんがそれに続き、柳くんも一歩前へ出た。
思わず精市を振り返れば彼は少し困ったように笑い、
「うるさいけど、良いヤツらだっていうのは俺が保証するよ」
と、また私の背中を押してくれた。
* * *
「てっきり、精市から私の話を聞いているものだと…」
「一度に相手をしたら大変だと思って、話してなかったんだよ」
結局こうなっちゃったのは神様のイタズラかもしれないね、と精市が苦笑した。
「名前はそっちの部員に俺のことは話してあるの?」
「入院してる友達がいるってことは話してあるけど、精市のことは言ってない。けど…」
「けど?」
「今日こうして立海のレギュラーさん達とも友達になれたし…隠し事みたいなことはしたくないから、とりあえずうちの部長には話しておこうかなって」
「そうだね。マネージャーが知らないうちに敵校のレギュラーと友達だったなんて知ったらいい顔はしないだろうし、いいと思うよ」
精市の理解力には本当に助けられるなぁ…
あ、と慌てて他の立海メンバーを振り返った。
「あの、変なことは言わないから安心してくださいね…!」
「ふふっ、大丈夫だよ。名前のことは俺が信用してるから」
「う…ありがとう…」
と、
「のう、傀儡師さん」
「は、はい、何でしょう仁王さん」
「敬語」
「…はい?」
「オトモダチに敬語はいらんじゃろ」
それはつまり…?
仁王君の言う通りですね、と柳生さんが微笑んだ。
「私のこれは癖のようなものですが…貴女のそれが癖でないのなら、どうか普段通りに話して頂けませんか?」
「皆さんが、良いのなら…」
勿論、と笑ってくれた皆に胸が暖かくなる。
新年早々沢山の友達が出来て、今年は良いスタートが切れたと思った。
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