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待ち合わせ場所である駅前のベンチに座り、スマホを片手にちらちらと駅の入口を眺めていれば、やがて見えてくる派手な赤髪と人目を引く浅黒スキンヘッド。
立ち上がってそちらに向かう私だったが、彼らの後ろに続いた予想外なもう2人の人物に思わず足が止まった。
え?なんでいるの?


「あっ!名前さーん!」


私に気づいた、何故かいる人物その1の赤也が嬉しそうにぶんぶんと手を振る。
人目を引くから、頼むからそんな大声で名前を呼ばないで欲しい。
赤也のせい?おかげ?で、ブン太とジャッカル、そして何故かいる人物その2の雅治も私に気付き、それぞれがバラバラの表情でこちらへと歩いてくる。
ちらちらとこちらに向く視線から逃げるように小走りで彼らに近づいた。


「ちょちょ、あの、雅治と赤也も来る予定だったの?」


どことなく不満そうなブン太に聞けば、バレた、と拗ねたような声を出した。


「つっても、元凶はコイツだけどな」
「うぐぐ…」
「えーっと…詳しく」


ジャッカルが説明してくれた話はなんとも信じ難いような…
なんでも、ジャッカルに変装した雅治に対して、ブン太が今日のことをペラペラと話したせい、だと言うのだが…


「ブン太って、変装も見破れないくらい目悪いの…?いつもコンタクト…?」
「ちげぇよ!!仁王だから分かんなかったんだっつの!!」
「はぁ…?」


ちらりと雅治を見れば、ピヨ、と謎の鳴き声のようなよく分からない返答をされた。
そんなこんなで、弦ちゃん達には黙っておくという交渉の元、雅治は着いてきたらしい。


「まぁ…雅治は分かったけど、赤也は?」
「俺が誘ったんじゃよ。一週間分の昼飯代と引き換えにな」
「そッス!」
「一週間分!?」


だ、男子中学生の一週間のお昼代ってそこそこするんじゃ…?
普段青学の皆とお昼を食べているから、なんとなくの量は私にも分かる。
流石に個人でバラつきはあるけれど、もし雅治が桃みたいな大食いマンだったらと考えると…
驚く私に赤也は、大丈夫ッスよ!と笑った。


「仁王先輩って結構少食なんスよねぇ。まぁ、一週間分が痛くないかと言われれば微妙ッスけど、名前さんに会えんなら安いもんっス!」


君のその笑顔がどこから出てくるのかを知りたい。
ごほん、とブン太が注目を集めるように咳払いをした。


「改めてだけど!いーかお前ら、ぜってぇ真田達にはバレんじゃねぇぞ!ここの5人だけの秘密だからな!?」


勿論ッス!と赤也が笑う。
5人だけの秘密か、なんか、悪くないかもしれない。
青学の皆には遊びに行くこと言っちゃったけど。
……大丈夫かな、まぁ、大丈夫だよね、うん。


「…ていうか、雅治と赤也はテスト勉強大丈夫なの?」
「うぐっ…その言葉は今日は辞めてくださいよ名前さぁん…」
「プリッ」
「よく分かんないけど大丈夫じゃないことだけは分かった」



* * *



「うぉぉおお…!」


色とりどりのミニケーキを前に、目をキラキラと光らせているブン太がめちゃくちゃ微笑ましい。
先程までのむすっとした顔はどこへいったのやら。
本当に甘い物が好きなんだなこの子は。
ブン太の隣では、赤也もそこそこテンションが上がっているようで、おぉ〜!とカラフルなデザート達を眺めている。

それに比べて…と、ちらりと見る先では、雅治が若干眉を寄せて店内へと怠そうな視線を投げていた。
なんで来たんだよ君は。


「甘ったるいニオイだけで腹一杯じゃ…」


ほんとに、なんで来たんだよ…


「早く食おうぜ、名前!」
「っわ…!」


ぐいっと腕を引っ張られ、自然と右足を庇うように左足がたたらを踏んだ。
そうだ、精市が話すとも思えないし、彼らはまだ私の膝について詳しいことは知らないんだ。
それでも私の膝の故障については知っているからか、悪い…!と慌てて私を支えてくれるブン太に大丈夫だよと笑った。
普段青学の皆が余計に気を使ってくれている分、なんだか少し新鮮な気分だ。


「ほ、ホントに大丈夫か…?その、…膝…」
「気にしないで。癖で庇っちゃうだけだから」


してはいけない事をしたようなブン太を安心させるように笑いかけ、くるりと彼の体をスイーツの方へと向けた。


「ほら、ケーキ達がブン太を待ってるぞ。早く食べよ〜」
「お、おう…!」


そうこうしながらケーキの前に来れば、ジャッカルがほらよとお皿を渡してくれる。
なんて気遣いが出来る人なんだ。
ハートに溢れたケーキ達をぽいぽい自身のお皿に乗せていくブン太を見つつ、私もショーウィンドウに目を走らせた。
サイコロ型のひとくちケーキもあるが、三角に切り分けられたケーキは小ぶりではあれども割とすぐにお腹一杯になりそうだ。
でも折角来たんだし、なるべく色んな種類を食べたいよなぁ……あ、そうだ。


「ジャッカルも甘い物好きなの?」
「好きか嫌いかっつったら好きではあるが……まぁ、普通だな」


コイツら程じゃねーよ、と忙しなく手を動かすブン太と赤也を眺めて、呆れたように眉を上げた。


「良かったら半分ずつ食べない?色んな種類食べたいし」
「あぁ、いいぜ。俺もその方がありがてぇ」


交渉成立!
やったー、とジャッカルと一緒にケーキを選ぼうとすれば、こつりと頭に重さが乗った。


「俺も混ぜてくれんかの」


少しの振動と一緒に、頭の上から声が降ってくる。
ということは頭に乗ったのは雅治の顎か。


「いいよ〜。3分の1にする?」
「一口でよか」
「じゃあ、ジャッカルと半分にしたのを一口あげるんでOK?」
「ん」


ジャッカルと雅治のおかげで沢山の種類を食べられそうだ。
ケーキ等が敷き詰められたお皿を持つブン太と赤也を他所に、私達は3人(主に私とジャッカルだけど)で相談しながらいくつかのケーキをお皿に乗せた。


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