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それから数日間。
学校がある日は、なんだかんだ毎日レギュラー陣全員が放課後になると部室に集まり、勉強会が行われた。
いつの間に国光が話をしてくれたのか、今となっては友人でもある女テニの部長が、ずっと持ってていいから!と部室のスペアキーを半分押し付けるように渡してくれたので、着替えは有難くそちらを使わせてもらっている。
なんかすいません…という気分だ。
勉強の合間に軽く打ち合いもしたし、今までのテスト週間とはまるで違う有意義な時間を過ごせたと思う。
おかげで昨日今日と二日間に渡ったテストも、いつもよりスラスラ解けたしなんなら楽しかった。
苦手意識を持っていた古典・漢文でさえ、周助が分かりやすく教えてくれたおかげで意外と楽しいと思えたし。
結果はどうなるんだろう。
ちなみに今までの学内テストでの私の最高順位は5位。
総合的にはやっぱり国光がまた1位なんだろうなぁ。
彼は毎回圧倒的1位を叩き出すから、打倒国光とまではいかないけれど、せめて彼の1つ下には名前を残したいところだ。
この後はひたすらテストの採点だからだろう、ほぼ時間ピッタリにHRを終えた先生が足早に教室を出ていく。
帰り支度をしていると、名前〜!という大きな声と共に教室に飛び込んできたのは英二だった。
色めき立つ周りには見向きもせず、彼は真っ直ぐ私の席へと走り寄って来る。
「名前っ!」
「英二、どしたの?」
「今日英語のテストあったじゃん!?名前のおかげで、俺にしては結構頑張れたんだよ〜!」
絶対過去最高点!と笑う彼にほわりと胸が暖かくなる。
「それは良かった。この一週間、頑張ったもんね」
なんとなく彼の頭をぽすぽすと撫でれば、へにゃりと英二が嬉しそうに笑った。
猫みたいで可愛いなぁ…なんて頬を緩めていると、周りから悲鳴やら尊いやら変な言葉が聞こえた気がしたけど、聞こえないふりをした。
「てことでさ!この後大石とゲーセン行くんだけど名前も行かない?」
「あー…ごめん、今日は生徒会なんだ…」
「そんにゃ〜…」
テストも終わってパーッと遊びたい気持ちは勿論あったが、明日から部活動が再開になって皆忙しくなるだろうと、生徒会は今日の放課後に集まることになっている。
「てことは、手塚も誘えないかぁ」
「え、誘おうとしてたの?」
「皆に声かけるつもりだったんだよねぇ」
「流石にゲーセンは……行くのかな、国光って…」
「断られそうだとは思ったけどさ、来たらそれはそれで面白いじゃん?」
まぁ、確かに…?とは思うが、やはりゲーセンにいる国光は想像出来ない。
「ゲーセンの後はどっか行くの?」
「まだ決まってないけど、ファミレスでご飯食べてから帰ろっかな〜って感じ?」
「じゃあファミレスから合流しようかな。出来たら国光も連れてくよ」
「えっホント!?やったぁ!!」
頃合いを見て連絡をするという約束をして、英二はまた後でー!と元気よく教室を出ていった。
たぶんその他の面々を誘いに行くのだろう。
ぽい、とペンケースを放り込んだラケットバッグを背負って教室を出て、ふと足を止めた。
誰もいないなんて珍しい……あぁそうか、今日はうちのHRも早かったんだ。
この後は生徒会だし、たまにはこっちから迎えに行ってみようかな、と、私は3組の教室前へ向かった。
私が着くのとほぼ同時に教室から3組の担任の先生が出てきて、軽く頭を下げた。
段々とザワついてくる教室内の声を聞きながら、廊下の窓辺にラケットバッグ越しに背を預けていると、1番最初に出てきた男子グループが私を見てあっと声を上げた。
「苗字さん…!?」
「ど、どうしたの?」
「いや、普通に考えて手塚に用だろ…」
私が答えるよりも早く、最後に言った彼がくるりと背を向け教室内に向かって、手塚ー!と呼ぶ。
「苗字さん来てるぞー!」
教室内が騒がしくなったのは気のせいだと思いたい。
「ご、ごめん、ありがとう…?」
「いいえー。じゃなー」
「ま、またね苗字さんっ!」
「また明日…!」
「気をつけて帰ってね」
手を振り彼らを見送っていると、すぐに隣に人の影。
見れば少し意外そうな顔でこちらを見ている国光が。
「待たせたな」
「全然。ごめんね、呼んでもらうことになっちゃって。急がせたよね」
「いや、大丈夫だ。珍しいな、お前がわざわざこっちに来るのは」
HRが早く終わったのと、ついでに聞きたいことがあったから、と言えば国光はうん?と首を傾げた。
生徒会室に向かいながら話そうと歩き出し、話題は本日の歴史のテストについて。
答えを確認するように聞けば、時間ギリギリまで悩みに悩んで出した答えはどうやら合っていたようだ。
ホッと息を吐き出せば、国光は少し考えてから、良ければ…と話し出した。
「委員会が終わったら空き教室で見直しでもするか?」
「えっ、…あー…」
なんとも有難いお誘いに即頷きそうになるのを慌てて止めた。
委員会の後は英二との約束があるし、出来たら国光も連れてくって言っちゃったし…
でもファミレスから合流って言ってあるから、委員会次第ではあるが割と時間はあるような気もする。
なんなら普段の下校時間近くまで学校にいても大丈夫なような…
「無理ならそう言ってくれて構わない。元々一人でやるつもりだった」
「あ、いや、そうじゃなくて…!」
訳を話せば国光は納得したように頷き、相談の結果、見直しをしつつ英二と連絡を取り、彼らがファミレスに向かう頃に学校を出ることになった。
嬉しいことに国光も一緒にファミレスに向かってくれるようだ。
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