青春ロックスタア
そんなこともわからないの、と馬鹿にするようにきみは笑った。その眼窩からぽろりとこぼれ落ちてしまいそうなまあるい双眸を、じょうずに三日月の形にしてしまう。薄く色付いた唇から吐息が抜けてゆくたびに、リップグロスのあまいかおりが鼻をつく。ぼくの好きな、バニラの香り。脳味噌が痺れていくようだ。腹の底を欲望が蠢く気配がした。きたないことばを吐いてしまいたい。それをきみのぬくもりでとかしてほしい。そんな衝動が駆け抜ける。