法正
2024/03/16
音を操る特殊能力者のいる世界。
※主人公「銀黎」固定
ある女性の目の前に黒い人形の化け物ーー“ノイズ”が立ち塞がる。ノイズは口を大きく開けると、大きな声で叫んだ。まるで生き物の声とは思えない、世界が割れるような声は人々を狂わせ、あるものは暴れ出し、あるものは倒れ、悲惨な状況を生んだ。
ノイズが倒れた女性に近づき、口を大きく開けて今まさに食らおうとした時だった。
「そこまでだ」
ノイズの背後に恐ろしい雰囲気を纏った男が立つ。
男はノイズの背中に手を突っ込むと、何かを回すように左に手首を捻った。
「ミュート」
忽ちノイズの鼓動が小さくなり、膝から崩れ落ちる。一瞬でノイズを死に追いやったのは、音を操る特殊能力者ーー“ムジカ”の一員だ。
「法正、まだいる!一旦離れて!」
「銀黎、頼む」
「任せて!」
法正と呼ばれた男が素早く後ろに下がると、先ほどいたところに大きな爪を持ったノイズが三体飛んでくる。
間一髪のところで攻撃を避けた法正と入れ替わるように前に出たのは、銀黎と呼ばれた少女だ。
「デクレッシェンド!」
銀黎が腕を水平に薙ぎ払うと、水色の光の輪が広がる。銀黎のデバフ技だ。
光の輪を浴びたノイズたちが大きな爪を振りかぶり銀黎を攻撃する。しかし、爪は銀黎に刺さるどころか、銀黎にぶつかると大きな音を立てて折れてしまった。
「今のあなたたちの爪は柔らかい紙のようなものよ」
銀黎の背後から法正が飛び出し、ノイズを蹴り飛ばす。
銀黎が法正の肩に手を置くと、静かに「クレッシェンド」を唱え、バフ効果を付与した。銀黎の能力で法正に力が漲る。
「お願い、法正!」
「終わりだ」
法正がノイズの胸に手を突っ込む。
「俺の能力はこういう使い方もある」
法正が思い切り手首を右に回す。刹那、ノイズが爆発した。
四散するノイズの破片を払いながら、残りの二体も同じように爆破していく。
静かになった街に、銀黎と法正だけが立っていた。
「法正のアンプ、便利だけどこれはやりすぎじゃない?」
「たまにはいいだろう?派手なのも」
「はいはい」
法正の一歩後ろを銀黎が遅れて着いていく。この街の平和を今日もムジカの面々が守っている。
法正と銀黎は、今日も明日も明後日も、人々のために戦場に身を投じる。ノイズが完全に消滅するその時まで。
厨二病全開。戦闘描写が書きたかった。