絮魯嬢




果たせなかったもの
引き受けてあげたい気持ちと
超えてしまったもの 私がおこぼれを 奪い取ってしまったのかもしれない
そういう
つらい気持ち
追いかけていたのに
いつのまにか追い抜いた
星は流転し 姉は停止して

真夏の冷蔵庫の温度と
母親が作る生クリームのケーキと
朝焼けの ストーブの上の甘い紅茶が懐かしい
窓から聞こえる 灯油を売りにくる
古い日本のうた
こたつに絡まったねこ
友達と読み漁る
棚に置き去りにされた漫画たち
ゴミ捨て場の天使たち
誰かが作った 祈りのような物語
父の硬い膝の上で聞かされるおばあちゃんのきちがいエピソード
夜明け前に誘われるコンビニ
みんなが寝静まったあとのゼルダ
真っ赤なエレキギター 大好きなAマイナーで街を飾り眠り
知らない街の知らない海
凍えながら
歩き続けたり
悲しい夜は電子の海を泳いで
遠い街の女の子と 遊んだ
散らばった星
バラされた交換日記の愚痴
高架線沿い
どこかで響くおっさんの歌声をどこまでも追いかけてチャリを漕いだり

そんな思い出が
心に優しく響いて火が灯る
与えてくれたもの
奪われたかもしれないもの どちらもあって
かなしいことばかりではなかった
長い日々の
虚しさによって 忘れてしまうだけで
人は鮮やかで
暗い夜のことも 生きる糧として 愛していた 愛そうとしてきた

勝手に死ににいこうとしないで
巨大なちからで 最初から無かったものにしないで
思い出して
思い出してほしい



05.07.05:39


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