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下記拍手お礼小説:太刀川長編(モブからみた二人)


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こんにちは、初めまして。僕は開発部山田と申します。
突然ですが、開発部には紅一点、女神と呼ばれる人がいる。
見た目は落ち着いた可愛らしい20歳。僕より年下だけれど、とても落ち着いている子。
誰にでも優しく、仕事もできる。気遣いも十分で時々見せる笑顔に見とれる。
僕はその一人だ。同じ開発部だとしても話す機会がない。それなのに、今、なんと、僕の名前を呼んで声をかけてくれた。
今目の前に女神がいる。かわいい、いい香りがする。
内容は正直入ってこない。だって名前を覚えてもらえているだけで僕は天にも上がる気持ちになったからだ。
このままご飯に誘おうか。いや、でも急にご飯は下心があるように見えるから…お茶だけでも誘ってみようか。今休憩中だろうか…など悶々と考えていたら…


「おい、帰んないのか?」
「太刀川君!」

僕が勇気を振り絞って誘おうとしたその瞬間…僕のライバルが現れた。
A級1位の太刀川。何を血迷ったのか…女神は太刀川と付き合っているらしい。僕はそのことが理解できずに質も悪い噂程度にしか理解していなかったけれど…こうも目の前で会話をされると…受け入れざるを得ない。

「もう打ち合わせは終わったの?」
「おー今度の夜勤変われとかだけだからな。終わった」
「そっか。ごめん、荷物まだデスクにあるから…すぐに取ってくる」
「急がなくてもいいだろ。どーせ、コケるんだし」
「こ、転ばないよ!」

あー、怒った顔も可愛いらしい。太刀川と女神は身長差がかなりあるから…上目遣いになる。傍から見てもその姿は可愛らしい。正直太刀川がずるいと思う。

「すみません山田さん、鬼怒田さんからの伝言は以上です。今日もお疲れ様でした」
「い、いえ!お疲れ様でした。もう、帰るの?」
「はい。これ以上ここにいると怒られるので」


なんて困った顔をしながら時計をちらっと見る。あぁ、確かに女の子、ましてや学生が残っている時間ではない。せっかく話せた機会だったのに…。


「そっか。気をつけて帰ってね」
「はい、ありがとうございます。お疲れ様でした」


そう言って彼女は小走りで部屋に戻っていった。荷物を取りに行ったのだろう…その背中をじっと眺めていると…


「…あいつ、俺のなんで」
「っ…僕は別に」
「あ、そうっすか。ならいいけど」

余裕そうな表情を見せているけれど…これは確実に俺を疑っている。いや、確信をもって俺を警戒している。俺はただ少しお近づきになれればと思っているだけで…太刀川から取ろうとは思っていない。
それに太刀川の声が聞こえた瞬間の彼女の晴れやかな表情を見たら…何も言えないだろう。僕は彼女を見てきたけれど…あの表情は太刀川の前でしか見せない。


「お待たせ、あれ…山田さんと話してた?」
「いや、なんでも。帰んぞ」
「あ、うん。お先に失礼します」

そう言って二人仲良く廊下を歩いて行った。二人の背中を眺める。あぁ、僕の入る隙はなさそうだ。いやでも…いつかのチャンスを待って、女神にお近づきになれれば。なんて淡い希望を抱いて仕事に戻った。

僕の背中を太刀川が睨んでいることも知らずに。