なんでと言われましても
「周防、ちょっといいか」
「か、ざまさん…私、もう休憩終わるので」
「風間、こいつまだ休憩中だから貸してあげる」
「寺島さんに売られた!?」
「周防ちゃん、とりあえず、座りながら話そうぜ」


少し時間をずらしてのお昼休憩。ラウンジもすいているし…ということで寺島さんと来ていた。二人でご飯を食べ終わって研究の話やら私の大学の話やらをしていたら…風間さんと諏訪さんにつかまった。そして、寺島さんに売られた。
食器を片付けて逃げようとした私の腕をつかんで再度椅子に座らされる。
正面には風間さんと諏訪さん…隣には寺島さん…あぁ、これがよく柚宇ちゃんが言っているつんだ、という状況なのかもしれない。

「…お前、また太刀川のレポート丸々手伝っただろ」
「ぎくっ」
「口に出すやつがいるか」
「か、風間さん私は、その…」
「教授から確実に太刀川の書いた分じゃないレポートが提出されたといわれた」
「…少しだけです」
「…はぁ」

風間さんにため息つかれた。諏訪さんはニヤニヤしてるし…隣に座る寺島さんには頭を軽くチョップされた。

「…次からは本人に書いてもらいます」
「やっぱり周防ちゃんはダメンズ製造機だな」
「違います!」
「レポートくらい太刀川にやらせろ」
「…はい」
「手伝えるのが嬉しいんでしょ」
「っ、そういう、わけじゃ」
「やっぱりダメンズ製造機じゃねぇか」
「諏訪さん、その言い方よくない!」

21歳組意地悪だ。木崎さんがいてくれないと意地悪。いてくれても意地悪だけど。5個ためてたレポートのうち1個をちょっと…念入りに手伝ってしまった。でも4つは本人がやった…なんて言い訳しても結局怒られそう。こんな言い訳したら、太刀川君にも飛び火が…なんて思って口を閉じる。


「周防なんで太刀川と付き合ってんだ?」
「…なんでと言われましても」
「弱みでも握られてんのか?」
「…太刀川君、そんなに悪い人じゃないです」
「レポートを彼女にやらせる時点で悪いやつだろ」
「…周防は太刀川に甘すぎる」

だめだしの会が始まってしまい、心身共に疲れる。寺島さんは助けてくれる雰囲気ないし…どうしようかな。と思っていたところ…

「お、なんか面白そうなメンツじゃん」
「…お前のせいだぞ、太刀川」

背後から太刀川くんに声をかけられた。明らかにびくっと肩を揺らしたら斜め前に座っている諏訪さんに笑われたから軽く睨んでおいた。

「俺?なにかしたっけ?」
「…心当たりは」
「ありすぎてわからねー」
「…はぁ。周防、この話はここで終わらせてやる。次はないからな」
「はい」
「え、風間さん美桜のこといじめてるんすか?」
「お前のせいだといっただろ。レポートくらい一人でやれ」
「げ…レポートはもう当分いい」
「まったく…」

風間さんがため息をついた。やっとこれで解放される…と思って数十分前から殻になっている食器を片付けようと立ち上がると…また寺島さんに腕を引っ張られて椅子に座らされた。

「寺島さん!?そろそろ戻らないと」
「室長は会議だからまだ大丈夫でしょ」
「裏切者!」
「ところで、太刀川」
「諏訪さん楽しそうじゃん。なんすか」
「…お前らなんで付き合ってんだ?」

その話を掘り返しますか!?恥ずかしすぎて顔を俯かせる。きっと耳まで赤いだろう。直接太刀川君に聞かなくたっていいのに。


「なんでって…言われてもな」
「おいおい、お前ら二人とも同じように切り返すなよ。毎回こういう話になるとはぐらかすだろ」
「あぁーそうっすね」
「俺も気になる。二人ともボーダーなければ接点なさそうじゃん。なんで?」


寺島さんにまで聞かれてどうしていいかわからなくなった時…膝の上になる私の手を太刀川君がつかんた。そしてそのまま立ち上がらせて…歩き出す。


「太刀川君!?」
「そういう話はまた今度、こいつ借りてきますねー」
「あ、おい太刀川!逃げんじゃねぇよ」
「諏訪さん、その食器よろしくー」
「よろしくじゃねぇ!」

ずんずんと歩いてしまう太刀川君。太刀川君の歩くスピードは私の小走りで…歩幅は全く合わない。

「た、太刀川君…ちょっと、まって」
「…あのメンツなんだったんだよ」
「え?」
「…なんで男に囲まれてたんだ」
「あ…それは…風間さんからちょっと」
「…はぁ」
「ご、ごめん」


ため息をつかれてしまった。自分の知らないところで自分の話をされていたら嫌だったよね。しかもなんで付き合っているかとか…。
ゆっくり足を止めた太刀川君が私のほうを見る。どうしよう、と思いながら俯くと…頭に大きな手が乗っかる。


「…お前、男に囲まれんの得意じゃないだろ」
「っ…」
「あの3人じゃなにがあるってわけじゃないだろうし、美桜自身もそれをわかってるんだろうけど…嫌なら嫌って言えよ」
「でも、大丈夫、だったし」
「なんで俺と付き合ってるかーなんて…そういう系の話だって苦手だろ」
「…ごめん」
「謝ることはないけど…」
「…頑張ります」

おう、頑張れ。と頭を撫でてくれる。人気がない場所だということもあり…珍しくボーダー内で触れてくれた。
さっきまで攻め立てられていた…のかはちょっとわからないけど、怒られていた時の緊張が抜けて体から力が抜ける。

「太刀川君」
「なんだ?」
「…なんで私と付き合ってるの?」
「お前までそれ聞くか」
「…気になる」
「ニヤニヤしながら聞くなよ」
「だって…」
「…一回しか言わねぇからな」

頭を撫でていた手が…後頭部に回って…軽く抱き寄せられる。

「好きだからだよ、美桜ちゃん」
「っ〜!!」
「顔真っ赤。それ直してから開発部戻れよ」
「た、ちかわくんのばかっ」
「聞いてきたそっちが悪い」

なんて意地悪が成功した時の悪ガキみたいな顔をしていた。
これだから…太刀川君から離れられない。

今度、諏訪さんたちに同じこと聞かれたら応えよう。



(好きだから以外思いつきませんって)