ガールズトーク
大学でお昼を食べるために食堂に行く。お昼のピークを過ぎたといえども…人はそれなりにいて、座る場所を探す。
人が少ない場所がいいな…と思いながらきょろきょろしていると綺麗な金髪ロング…望ちゃんを見つけた。今一人みたいだし、声かけてもいいかな…と悩んでいると…私の視線に気が付いた望ちゃんが顔を上げた。そして、微笑みながら手招きをしてくれた。

「ご、ごめんね、じっと見ちゃってて」
「声かけてくれればいいのに」
「真剣に課題見てたから…声かけたら悪いかなって思って」
「丁度休憩しようと思ってたから。美桜はご飯でしょ。丁度いいじゃない」

望ちゃんのご厚意で席を確保することができた。望ちゃんは美人さん且つボーダー隊員ということもあり少し近寄りがたい。私も最初は声をかけることができなかったから、周りの気持ちが少しわかる。
しかし話してみるとお姉さんだけれど、可愛らしく面白い人。二宮君との掛け合いは時々バチバチし始めてみているこっちがそわそわしちゃうこともあるけれど…とても素敵な人だ。


「美桜と二人で話すの久しぶりね」
「そうだね。ボーダーいても私研究室籠りっぱなしだったから」
「開発部は大丈夫?変なエンジニアにいじめられていない?」
「大丈夫だよ、私みたいなの子供としか思われてないし」
「…はぁ、さすがに太刀川君に同情するわ」
「なんで?」
「…はぁ」

2回もため息をつかれてしまった。突然の太刀川君の名前にドキッとしながらご飯を口へ運ぶ。
そもそも私みたいな子供をエンジニアの方々が相手にするわけもないし…子ども扱いしかされていない気がする。あとパシリ。だから、望ちゃんが心配することはないんだけどなーと思う。

「私も望ちゃんみたいに大人っぽくなりたい」
「え、美桜可愛らしいじゃない」
「…可愛くないし、違う」
「なにが?」
「…美人になりたかったなって。あと背ももう少し欲しい」

私は女性の中では背が低いに分類される。それに顔もどちらかといえば子供っぽいほうになるだろう。だからとは言わないけど…太刀川君の隣に立っていると悲しくなる時がある。
太刀川君は…もともとのルックスがいい。背も高いし顔もいい。頭は…うん、ちょっと発展途上だけどそれをカバーするくらいの戦闘力はある、はず。そういうところがある太刀川君は…正直なところ女の子に人気だ。大学でもよく女の子が噂しているのを聞く。私がもう少し大人っぽくて美人だったら…太刀川君の隣に自信もって立てたのかもしれない。

「美桜、いらないこと考えているでしょ」
「…いらなくない」
「太刀川君と美桜はお似合いよ」
「…望ちゃん」
「ちなみに、私は太刀川君願い下げだから。あと二宮君も」
「おぉ…なんか、二宮君とばっちり…」
「美桜はもう少し自信もっていいいと思うわよ。太刀川君だって、美桜の事ちゃんと好きでしょ」
「…だと思う」
「なら、自信持てばいいじゃない。大丈夫、私から見たらお似合い以外ないから」
「…本当に?」
「本当よ。そうやって悩んでる美桜が可愛い」
「っ〜」

太刀川君には内緒にしておいてあげるわね。なんて意地悪そうな顔をしていうんだから…美人はいいなと思う。でも…望ちゃんがお似合いだって言ってくれたから…少し心がすっきりした。

「そういえば、美桜この前先輩に告白されてたんでしょ」
「っ!?な、んで知ってるの」
「噂になってたわよ〜外であんなに堂々と告白してれば」
「きゅ、急に声かけられて…知らない人だったから、固まっちゃって」
「人目に付くところで告白なんて…美桜のことも考えてほしいわね」
「…でも、ちゃんと断れたから」
「だめよ、そんな男についていったら」
「いかないよ!だって、」
「…だって?」

そこまで言って、次の言葉を発するのに時間がかかった。というか、恥ずかしくなった。望ちゃんはそれに気が付いてニヤニヤしながらこちらを見てくる。

「なによ、言いなさいよ」
「…あー、だって、ね。うん」
「だめよ、そこまで言ったなら言いなさい」
「…だって、たち、かわくん…がいるから、ついていかないよ」
「ん〜!可愛い!本当に太刀川君の事、好きなのね!」

そう言葉にされると、顔が熱くなる。きっと今顔が凄く赤い、うん。絶対に。残りのご飯を口に流し込み…水を飲む。早く熱が冷めるように手で仰いでいると…

「あ、そうだったわ。今日、新しいチャーハン作ったのよ。太刀川君たちに食べてもらおうと思ってるの。今から本部行く?」

その一言で顔の熱が一気に冷めて背筋が凍り、顔が青くなっている気がする。うん、絶対に。望ちゃんのチャーハンといえば…独特の、ちょっと殺傷能力の高い食べ物になっている。前に20歳組が食べて、その後の防衛任務に響いたという話を聞いてから…私の中で恐ろしいものとして認識している。

「本部、行くけど…私は、その」
「まぁ、今食べたばかりだから美桜は食べられないわね。まぁ、男3人にかかればそれなりの量があっても食べられるわね。よし、落ち着いたら一緒に本部行きましょ」

私はこの時、太刀川君にすぐに連絡した。望ちゃんがチャーハン食べてほしいそうです。と…。でも、ランク戦中の太刀川君がそのメッセージに気が付くことはなく…、無理やり連れてこられた二宮君と堤君と太刀川君が…具合が悪くなることを想像しながら、胃薬の数を数えた。