お昼休みにしていた会話をふと思い出した。
―――だいたいの男はこっちからキスしたらスイッチ入ってその先を我慢できなくなるよねぇ!―――
そもそも、だいたいの男ってなんだろ。
実弥もその中に入る?
同じ会社の後輩、不死川実弥と付き合っている私。
金曜日の昨日、実弥の部屋に泊まりに来て3度ほど致したままの格好で目覚めた今。
脳内でそんな言葉が浮かんでしまった。
ここんとこ仕事も忙しかったし実弥も疲れてるんだろうってこのまま寝かせておいてあげたい気持ちと、
ちょっと試してみようかな?って好奇心とが私の脳内を駆けずり回っている。
小さく寝返りを打った実弥は、私の後ろからぎゅうって腰に腕を回して抱きしめる。
無意識でやっているんだと思う。毎度こうして実弥に守られるようにして眠るのがいたについてきた。
くるりと反転して実弥の分厚い胸板に顔を擦り付ける。
んぅーって唸りながらも私の背中に腕を回す実弥の目は勿論閉じたままだ。
ただ意識は辛うじて起きているのか、私が動くとそれに合わせて実弥も動いてくれる。
強面の顔も寝顔は可愛いなーなんて、実弥の頬に手を添えると、これまた無意識でなのか、その唇にそっと自分のを重ねた。
触れるだけの可愛いキス。
「甘えてんのかァ」
目を閉じたまま、小さく言葉を発する実弥に顔を上げて「ジッとしててね?」…ちょっとだけ胸を押して距離を作ると薄目を開けそうな実弥の目を指で閉じてそのままもう一度ちゅ、って小さくキスをした。
ン、て小さな実弥の声。
でも構わずもう一度口付ける。
鼻から息を出す実弥の呼吸がほんのり荒くなったような気もするけど、構うことなくそのまま実弥の唇を舌でなぞって「おい、」タイミングよく開いた唇の中にニュルリと舌を入れ込んだ。
喋ろうとしていた実弥の言葉を飲み込むキスに、実弥がなんとか声を発しようとするけど、舌を絡ませているからうまくなんて喋れなくて、小さな喘ぎ声が部屋を充満している。
息継ぎで唇を離してもすぐにまた舌を入れ込んで逃げる実弥の舌を絡めとる。
歯列を舌でなぞって頬に添えていた手を実弥の耳の穴に突っ込むと「おい、ゆき乃ォッ!!」力づくで実弥が私を離した。
肩で大きく呼吸を繰り返す実弥の顔が軽く高揚している。
目ん玉ひんむいてハァハァ言ってる実弥をケロっとした顔で「なぁに?」なんて言うと若干イラついて眉間にシワを寄せる実弥。
「なにじゃねェ!なんだよ朝から、卑猥なことしやがって!してェのか!?」
それでも優しい実弥は、乱れた私の髪の毛を手で直してくれている。
今時、卑猥とか言わなく無い?
「キスしたかったんだもん。私から。」
ボソッと呟くと不意打ちだったのか、予想外だったのか、一瞬でボッて音が鳴りそうなくらい真っ赤になる。
大きな目ん玉の中の黒目が面白く泳いでいるのが見える。
実弥が動揺しているのが分かって笑いが込み上げる。
「なら、もっとしろよ。」
スーッと肩の力を抜いて目を閉じた実弥にキュンとして「うん。」腰に腕を回すと、実弥が背中に腕を回してグッと引き付けたんだ。
最初は小さくくっつけるだけのキスを何度か繰り返す。
実弥は目を閉じて呼吸で理性を保とうとしているのか微動だにしない。
だから唇を枠取るように舌先でツーってなぞると、「エロいぞォ、ばーか!」なんてほんのり口元に笑みを浮かべる。
「実弥は我慢しててね。キスしていいのは私からだけよ。」
「…なんだそりゃ。」
「いいから。キスしたくなってもダメよ?ね?」
「…もう既にしてェんだけど?」
マジ!?ギョッとした私に目を見開く実弥は「すげー物足りねェ、」なんて吐き捨てて瞬時に私を組み伏せた。
あれ?って思った時にはもう、私の頭を抱えて実弥の体重が落とされていて身動きができない。
「まぁたまには見上げるのも悪くねェが、やっぱりゆき乃はこの角度がいい。」
トンっと顔の横に手をつくと、実弥の顔が降りてくる。
間髪入れずに唇をこじ開けて舌を絡ませる実弥の下半身はちゃんと硬さを増しているのすら分かった。
だから不意打ちでそれを指で握ると当たり前に「オイッ!」実弥がキスを止める。
ジュルリと涎混じりの口元を手の甲で拭って私を見下ろす実弥は肩で大きく息をしている。
「物足りないわりに硬いわよ?」
「バカ、あたりめぇだろ!好きな女にキスされてんだから。」
やば、キュンとした!!
好きな女!って堂々と言ってくれる実弥にしこたまキュンとした。
もうどーでもよくなったから実弥に任せる。
「実弥もして。いっぱい、して。」
「覚悟しとけよォ!」
ニヤリとニヒルに口端を緩めた実弥は、休みの日をいい事に何度となくその腰を振り続けるんだった。
((不死川実弥 キス我慢度指数 ほぼ0%…))