プレゼントゲット

自分に対する人の感情を身体で感じとるサイドエフェクトを持つ雅人は、私の視線だったりラブ光線に気づくとチッと舌打ちをする事が多かったけれど、晴れて雅人と両想いになってからは、その感情を黙って受け止めるようになった。
学校が終わると真っ直ぐにボーダー本部に直行する雅人。どうやら最近個人戦で戦う仲間が増えたみたいでちょっと楽しそうだった。

「また玉狛の子と個人戦?」
「そーだ。アイツの感情は俺には読み取れねぇから楽しーんだよ」

大股でズカズカと歩いていく雅人の後ろを逸れないようにパタパタとついていく私は間もなく訪れるクリスマスのプレゼントを強請ろうとしていた。クラスメイトと一緒に見た雑誌に乗っていたネックレスが可愛くて欲しいなぁ〜と思ったら偶然にもクリスマス前だった事もあり、これはと雅人に強請ってみようと思った訳である。
だからジッと後ろから私が見つめていると、「ンだぁ、おい」振り返りざま雅人の腕が伸びてきて私の首にかけられる。ヘッドロックにも似た雅人の愛情表現にニンマリしながら肩に回された腕をキュッと握る。

「クリスマスプレゼントに欲しいアクセがあるの!買って!」
「あァ!?プレゼントだぁ?」
「そう。雅人に思わせぶりなこと言っても絶対通じないだろうから単刀直入に言ったんだよ」
「な、…まぁそりゃ間違っちゃいねぇが」
「すっごい可愛いの。ゆき乃に似合うと思うんだぁ」
「けっ、自分で言ってんな!で、どんな奴だよ」

面倒そうな顔をしつつも、雅人は実は私にゲロ甘だ。なんだかんだで絶対頼みを聞いてくれる。クリスマスなんて微塵も興味が無いかもしれない、雅人自身は。それでも私がそうしたい!と言えば、できる限り応えてくれるのが雅人だった。デートの時も、彼が何かを発信してくれる訳じゃない。でも私がここに行きたいだとか、あれがしたいだとかそういう望みをブツブツ文句を言いながらも付き合ってくれている。そんな雅人のゲロ甘な一面を知っているのはこれから先も私だけでありたいものだ。

「後でLINE送っておくね!」
「あぁ」

素直に答える雅人に胸の奥がほっこりしていると、個人戦会場へと辿り着いた。C級隊員達の制服が目立つ中、所々にB級の個人戦をしに来た隊員がチラホラと見受けられる。
長椅子に座って大股開いた雅人のマスクの紐をパチンと引っ張る私をしこたま睨みつけてくるけど、睨むだけで怒らない。

「雅人もお揃いで買おうよ、ね?」

先程のクリスマスプレゼントに欲しいネックレス画像を隣にいる雅人のスマホに送ってそう言うと、彼の視線がスマホの画面に移ってそれを睨みつけた。

「は、高けぇな、おい」
「だってブランドだもん。クリスマスだし、一年頑張ったご褒美的な?」
「構わねぇけど、それなりのメリットはあんだろな?」

立場逆転、あれれ?と上を向けば、マスクを顎のところに持ってきて、サメのようなギザギザな歯を見せて笑っている雅人が私のずり落ちそうな背中を腕一本で支えている。ザワザワとするフロアに、雅人が視線を感じてチッと舌打ちしたけれど、私の上から退く気は無いらしい。そして、雅人の言うメリットが今この状況で強烈に脳内に浮かんだ。

「あ、あるわよ、メリット!それはもう、存分に色々と、むしろ何でもこいだよ!」
「ふっ、忘れんじゃねーぞ、その言葉」

マスクを口元に戻すと雅人は漸く私の上から降りた。それと同時、ソファーにずり落ちる私を誰かが覗き込んでいて。

「どうもどうも、カゲ先輩の彼女さんですか?」

真っ白い髪の毛の小柄な少年がニヤついた顔で私達を覗き込んでいた。

「おー空閑!やっと来たか、」
「いやぁカゲ先輩も罪な方ですな。どうも初めまして、空閑遊真です」

ペコリと丁寧に頭を下げる彼に起き上がった私はその場で同じように頭を下げた。

「一ノ瀬ゆき乃です。もしかして、玉狛の?」
「そうです、俺の事です」
「初めまして。今度私とも個人戦して貰いたいな」
「おお勿論です!カゲ先輩のOKがでるならいつでも相手になりますぞ」
「ふふ、宜しくね、遊真くん」

logで見るよりずっと小柄だったど、嫌な感じは一切なかった。なんとなく雅人が気に入るのも分かるような気がする。遊真くんには嘘がないように思えた。

「じゃーなゆき乃!俺はしばらくこいつと遊んでく。終わったら連絡する」
「うん、行ってらっしゃい!」

手を振る私を一瞥すると雅人と遊真くんは楽しそうに話をしながら個人戦ブースへと入って行った。彼がいなくなった事でたちまち視線は私に集中する。
勿論ながら雅人のようなサイドエフェクトも持っていない私は多少の視線なんて気にならない。こんだけ毎回人混みに出ると視線を浴びていたら相当なストレスなんだろうなぁなんて思う。元々いい子ちゃんじゃない雅人が一々苛々して怒るのも無理はない。とはいえ、どうにかなる事でもないんだけれど。
それから数時間、雅人と遊真くんの個人戦が終わる頃、また顔見に来るとするか。重たい腰をあげて私は本部内にある影浦隊作戦室へと歩くのだった。


-fin-
今日、好きになりました♡